1つ前のレビューの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が面白過ぎて、1日空けてもう1回観ちゃった!のでタラちゃんのクソ長作品続けて鑑賞。
南北戦争終結後のアメリカ、ワイオミング州。猛風吹の中を走る駅馬車を止めるのは黒人の賞金稼ぎウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)。3人のお尋ね者の死体を運ぶため先客のルース(カート・ラッセル)に同乗を依頼するが、彼もまた賞金稼ぎで、1万ドルの賞金首デイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)を縛り首にするためレッドロックへ向かっていた。互いに面識のあったルースはウォーレンの同乗を許可し、駅馬車はレッドロックへと向かう。そこへ自称信任保安官のクリス(ウォルトン・ゴギンズ)が更なる同乗者として加わるが、南北戦争時代の恨みからウォーレンへの侮蔑の言葉を投げ付け、車内の緊張感が高まる。馬車はようやく「ミニーの紳士服店」に到着するが、店内には既にワケありの4人の先客がいた。
これもなっっっがいけど面白かった!
緊迫感のある展開と、章立てされた見せ方のおかげでそこまで長さを感じなかったのがよかったのかも。
西部劇のジャンル映画になるんだろうけど、舞台が風吹で閉ざされた山小屋ワンシチュなのが特異な感じというか、タランティーノが得意とする会話劇をフルに活かした作品だった。
ドカ雪の真っ白い世界の中、カート・ラッセルにブン殴られたジェニファー・ジェイソン・リーの鮮血が映える(ここで流れるホワイト・ストライプスのApple Blossom!)。
お互いの賞金を守ると約束したウォーレンとルースが疑惑の目で他の宿泊客たちを眺める前半は盛り上がりに欠けるものの、不穏な緊張感の会話と、「なにか伏線が張られているんじゃないか」と観ているこちらも疑心暗鬼にさせるような見せ方が上手い。
ところが3章の終わりから一気にタランティーノお得意の血生臭い展開に。
"黒くてデッカいナニをしゃぶらせてやったのさ!"
正義と悪について説くようなセリフがチラホラ出てくる中で、ここもまたワーオという感じ。「欲求を満たすための正義」「善と思って悪を成す」という西部開拓時代の正義観が出てくるけど、これはどっちなんだろう。モヤモヤするよね。
一気に血みどろと化す毒コーヒーのシーンはなかなかのインパクトなんだけど、その前のデイジーがギターを弾き語りながらチラチラとコーヒーを見てるシーンのピント表現が面白かった。
緊張と緩和、ドンデン返しからの時系列遡りと一気にストーリーの謎解きと展開が進む後半は息の付けない目まぐるしさ。
"どうだ!待ち伏せ去勢執行人!"
静かな睨み合い血飛沫舞う銃撃戦のコントラストが気持ちいい。
血に塗れた顔面で勝ち誇った表情で長々と喋り続けるデイジーの不快さときたら!ジェニファー・ジェイソン・リーはマジで怪演。
"極悪な奴らは縛り首にしないと"
"悪党は残らず吊ればいい"
友人の意志を継いだ2人の選択は正義だったのか私刑だったのか。
"偏見のあるものは正義になり得ない"
タラちゃんの作品は絶対的な悪に対しての暴力はフィクションとして肯定しているように思うけど、この作品はちょっと表現が違ったような気がするなぁ。まあ根っこの部分は変わらないんだろうけど。
今まで観てこなかったけどタランティーノ好きだな〜。次は『ジャンゴ』かな〜。