Donatello

ヘイトフル・エイトのDonatelloのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
3.8
【本作をまだ観ていない『レザボア・ドッグス』ファンの方へ】
1.オープニングクレジットの文字は無視しましょう。
2.うっかり観た人は黒いスーツの二人組にピカッとやってもらってください。
3.ついでに『イングロリアス・バスターズ』も忘れてください。
4.それらと関係ないどうでも良い話ですが劇中壊されるギターは450万円っていう価格以上の、博物館の人が悲しむような歴史遺産です。その無惨な顛末を是非御堪能ください。
【以上です。以下はすっ飛ばして下さい】

こういう事言うと元も子もないんだけれど、結局は『レザボア・ドッグス』の面白さが今でも際立ってるという事に気づいてしまう作品だったな、と。

チャプター形式で、時系列をバラバラにして、タネを明かしていく手法は良いんですが、まず隠すべき事はトコトン隠匿すべきだったんじゃないかと思うんですよね。
折角前知識無しで観たのに判明してしまった以上、あのクソ寒そうな猛吹雪の中そこしかないなと。後はいつ出てくるのかと気になって気になって。
『イングロリアス・バスターズ』を観ていなければ、そのフレーム移動に多少の驚きもあったかも知れないですが、分かってしまっているとそれ程面白くない。
毎作品繰り出される下らない冗長な会話も、僕はもの凄く愛してるんですけど、あくまでその後に控える衝撃を高める見せ球であって、衝撃が薄まると少々その意味も薄まっているように思えちゃったんですよね。

『レザボア〜』でのティム・ロスさん扮するミスター・オレンジと人質として捉えられた警官との唐突なやりとりの衝撃は薄々感づいていてもインパクトがあっただけに、今回のこれは狙いすぎて通り越したのかそもそも中途半端なのか意図がよくわからない。

ミステリー作品においての所謂クローズド・サークルという「閉鎖的環境化で発生する事件もの」を、あくまで見せかけとして使い、バイオレンス上等R18作品にするあたりは流石ですけども。

あと、元レンタルビデオ店員の大先輩としても尊敬してやまないタランティーノ監督ですが、そんなタランティーノ監督肝入りのパナビジョンの65mmを使っての撮影、70mmで上映するのは結構なんですけども、大半の劇場蚊帳の外でね。
ノーラン監督のそれとは意味が異なってて、いまや「ARRI ALEXA 65」なんていう化け物デジタルシネマカメラみたいなのがあってですね、どうせならそういうのを進化させる過程に携わって欲しいなと思うんですよね。
というか、じゃあ『パルプ・フィクション』がそういうので撮られていなかったから面白くなかったかっていうとそんな訳なくて、規格を乱立させて破滅した元の状態を目指してるのかと思ってしまう。
古いしきたりに反発する一方で、古い伝統を愛するタランティーノ監督らしいと言えばらしいけど。
「劇場で映画を観るという事に特別な体験をもたらしたい」という大筋の所は大賛成なんですが。

もういっその事、サミュエル・L・ジャクソンさんの首が外れて頭だけで走り出したり、マイケル・マドセンさんの体が割れて触手が出てくる展開ならIMAXカメラで撮って欲しかったぐらいですが。

いやでも面白かったんですけどね。
期待し過ぎちゃってゴメンなさい。

ところでリンカーンのあれって実は本物なんじゃ…
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