2016年3月鑑賞
8作目となる本作、タイトルの「エイト」は絶対ひっけたものでしょう。
タランティーノで西部劇、しかも168分の長尺。 もうこの時点でまず外れる事は無いと思いました。
そしてその予想は見事に当たります。 とにかく全編通してタランティーノのやりたい放題なんですね。
でもそれが全部プラスに転じていて、観ていてとてもわくわくとさせてくれます。
サミュエルLジャクソンを始めとする濃いキャストも実に良い味がでています。 みんなすごい良い表情をするんですね。
しかし何といっても主役のサミュエルでしょう。
タランティーノの作品だと、彼は何故こんなにも輝くのでしょうか。
単純に相性だとは思うのですが、比較的最近観た「キングスマン」と比べるとまるで別物なんですよね。
そしてタランティーノの念願叶った、エンニオ・モリコーネの音楽が実に素晴らしいのです。
もうすぐ90に届こうというのに、こんなにも音が尖ってるのだから驚きです。 しかもそれが実に作品にフィットしているんですよ。
謎なのが以前「彼とはもう仕事をしたくない」とコメントしていたのに、今回何故オファーを受けたのかなんですよね…。 (因に今作で音楽でゴールデングローブ・英アカデミー・アカデミーと全て作曲賞を受賞という快挙を遂げました。おめでとう!)
物語は吹雪で孤立した山小屋で織りなす密室ミステリー、雪山ウェスタンです。 雰囲気的にはどこか「レザボア」を思わせるその作りは、時間が進むにつれ緊迫感がどんどん増して目が離せなくなります。
ゆっくりゆっくりと盛り上がりを増していくからなのか、3時間近い尺もまるで長く感じませんでした。
タランティーノらしくいつもの通り長い台詞の掛け合い、いつもの通り暴力と流血、いつも通りのアナログな作り。
呆気にとられるようなどんでん返しなど色々つっこみ所もあるのですが、どこかそれが憎めないのです。
観ているとわかるのですが、作品全体がとても映画愛に溢れているのですね。 個人的には「レザボア」「パルプ」に並ぶ大傑作でした。
とても濃密なタランティーノの世界、是非とも堪能してください。