Kuuta

ゴジラ キング・オブ・モンスターズのKuutaのレビュー・感想・評価

4.2
とても良かった。心底ガッカリしたファイナルウォーズ以来、15年ぶりに「最新技術で作ったゴジラお祭り映画」という念願が叶った。ややネタバレ。

ゴジラは長寿シリーズ故に子供から大人まで、原水爆から完全なファンタジーまで、無数の要素が重ねられてきたキャラクターだ。なので新作を作る上では、ゴジラのどの側面にフォーカスするのか、きっちり考える必要がある。

その点、2014年のギャレス版ゴジラは基本的な伝統の継承、ユニバース化に向けた改変、興行的成功という噛み合わせの悪い要素をなんとか合格ラインにまとめた作品だったと言える。

そして今作は、前作を土台にしながらも、お祭り映画に徹している。シン・ゴジラからオミットされた怪獣プロレス、自己犠牲、家族愛、リアリティ無視の設定を詰め込んでいる。

現代日本におけるゴジラを政治的群像劇で蘇らせたシン・ゴジラや、ゴジラのテンプレを解体してSFに挑んだアニメ版と、綺麗にジャンルが住み分けられている。これもまた1つのゴジラだし、こういう荒唐無稽さこそが邦画には出来ない、ハリウッドゴジラに期待していた部分だったので、我が意を得たりという感じだった。

ファイナルウォーズ直後の喪失感を思い返せば、日米がそれぞれの得意分野でゴジラ作品を発表している現状が、本当に嬉しい。長期的な戦略を考えている人が東宝にいるのだろうか?

また、あらゆる時代において全く強度の変わらない伊福部音楽の偉大さを感じた一作でもあった。Blue Oyster Cultまで出て来たのは日米のゴジラ文化のごちゃ混ぜ感があって良かった。

人間パートはボストン出身のPixiesの名曲Wave of Mutilationで始まる。「体を切り刻む波」の歌なので、分断された家族へのマディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)の葛藤が現れているのだろう。メールの返事に悩んでいるとベーコンを焦がし、ベーコンだったものに変わってしまう。焦げたフライパンを水(=今作におけるゴジラの象徴)が冷ましていく。この時点で「家族の不和の暴走と、ゴジラによる収束」という全体の構成を示している。

マディソンはアンドリューの着ていたレッドソックスのシャツを着ており、彼女もまた彼の死を背負っている。母娘は一種の共犯関係にあり、酒に溺れた父親は家族から追い出される。3人の心がバラバラだったからギドラが復活し、3人で壊れたオルカを直すことでゴジラが復活する。

息子の死に意味があったと思いたかったエマ(ヴェラ・ファーミガ)。社会に対する負の感情の暴走と、破壊行為への葛藤→改心というプロットは古くからの怪獣映画の基本である。夫婦と子供をゴジラが結び付ける展開は「ゴジラVSモスラ」を連想。既視感バリバリの設定ではあるが、「あーゴジラでよくある奴だ」と私は楽しく見ていた。

メキシコで市民の避難シーンを入れたのはゴジラ映画らしさ満点で良かったし、「手前に走る人、奥で暴れる怪獣」という日本の特撮の伝統を意識した構図も嬉しい。隙あらば地球空洞説のスタントン博士(ブラッドリー・ウィットフォード)が、事態が悪化するほど科学者としてのウキウキを隠せなくなっていくのが、初代の山根博士を見ているようでかわいらしかった。

芹沢博士(渡辺謙)を出したからには初代に対する落とし前は付けないといけない。難しい課題だったと思うが、なんとかクリアしたなという印象だった。

芹沢は家族を殺した原爆を受け入れ、「止まっていた時計を動かす」。核爆発の衝撃をマーク(カイル・チャンドラー)はチェン博士(チャン・ツィー)と手を握り合って体験する。核やゴジラの被害者と加害者の融和が示唆される。芹沢の思いを受け継いだマークは、息子を殺したゴジラを受け入れ、共闘すべきだとモナークを促す。

傷を受け入れれば、原爆とも共存できる世界が作れるというメッセージ…。
日本人からすれば、米国映画で日本人にそれを言わせるのはどうなんだろうとも感じるが(渡辺謙も色々主張したが通らなかったそう)、とにかく初代の展開を踏まえようとしてるだけでも、前作よりはマシかなと。

分かりにくい部分はある(後述)ものの、人間パートでやろうとしている事自体は、歴代作品の中でもそこまで酷くはないというのが私の総評です。VSシリーズの「テーマは良いが中身が伴わない」粗っぽい脚本もそのままにコラージュしたような印象。オルカ(見た目は小美人を入れる箱そっくり)や、色々雑なテロ集団はVSシリーズにそのまま出てきそう。家族でオルカを直す場面の「しょぼめの人間ドラマが怪獣バトルを左右する」感じ。ああ、ゴジラだなぁと。

レジェンダリーの良い流れの中で、ドハティ監督が自由に怪獣で遊べる環境ができたんだろう。怪獣パートは、それぞれのキャラクター付け、行動を歴代のそれを踏まえた上で魅力的に描けている。

モスラはもう、出て来るだけで涙。傷付いても優しい心で戦い続ける怪獣の女王!モナークのデータにMothraじゃなくてMosuraと書かれてたのがリスペクトを感じた。羽化が満月の夜なのもわかってんなーと。予告にもあったゴジラの盾になってギドラの光線を受けるシーン泣けたし、シリーズ初の成虫による糸攻撃、しかもそういう見せ方があったか!と舌を巻いた。ラストの展開は平成シリーズファンへの大サービスだろう。

ラドンの活躍にも涙。初登場時の死に場所となった火山からの復活に加え、あえてのファイヤーラドンなのがVSシリーズへの愛を感じる。今作で一番「デカイ」と思った。飛んでるだけで大災害が起きてしまうのがラドンのお約束であり、魅力であり、敵怪獣のはずなのにやられると切ない気持ちにさせられる。最高。

(キングギドラに特攻する場面は今作最大の見所だ。敵わないとみるやあっさり配下に下る小者っぷり。昭和のアンギラスっぽい、舎弟感のある立ち回りだった。名前すら「かわいいな」とか言われて、ネタキャラとして輝いていた)

キングギドラは強過ぎてホントにお前キングギドラかよと。地獄の入り口のような南極の大穴から首や尻尾がヌッと伸びてくる不気味さ(氷の下から黄色い光が漏れてくる煽りが効いている)。天候を自在に操る神々しさは歴代最高ではないか。

怪獣大戦争の呼び名を引用したストレートな宇宙怪獣設定が嬉しいし、ギドラがキラアク星人やX星人のような「操る側」に立つ意外性も良い。

しかもレギオン的な侵略者。ゴジラは地球の守護者だし、ギャレス版以上に平成ガメラなストーリーだと感じた。「我々は大勢であるが故に」っぽいセリフを入れたのも意図的?(ゴジラにも古代遺跡や傷を癒す辺りにガメラ要素を感じた)

首のキャラの違いにも萌える。ゴジラと対峙した時に真ん中に不安げな視線を送る左。オルカの洗脳が解けたのにボーッとしていて真ん中にどつかれる左。人間目線だと神のようなのに、怪獣目線になると人間味が立ち上がってくるバランス。まさに怪獣映画だった。般若心経は悪魔要素とはあまり噛み合ってない気もした。

ゴジラは言わずもがな最高だった。海での仁王立ちや格闘に、東宝の大プールでの特撮を一瞬想起させられた。一生懸命戦っていたのに家を壊されてかわいそう…。「ゴジラの家→人間の家→両者が共存する家としての地球」という流れで一応描いているが、非常に分かりづらかった。

復活時の睨みつけは「人類もいい加減にしろよ」というゴジラ対ヘドラ、エンドロールで追悼されていた坂野義光イズムか。復活して世界を救う姿を神(キリスト)になぞらえているのだろう。直前に魚(キリスト教徒のシンボル)が大量死する。

軍隊と一緒にギドラに向かって走るシーン、背ビレを光らせて威嚇する様に震える。無邪気に応援できる、文句無しのカッコよさだった。

決め技に赤い熱線を持ってこなかったのは、今作には珍しくファンの痒いところに手が届かなかった印象。初代リスペクトで鉄塔が溶けたのはとても良かった。

以下、細かな不満点。ネタバレ度数が上がります。

脚本は日本のゴジラと同様、粗い。
エマの行動の理由が分かりづらかった。息子を失った辛さや追い詰められた心境をきちんと描写していないから、感情移入しようがないのが原因だろう。

また、父と母で怪獣へのスタンスが対照的なこと、両者の溝が埋まって家族が1つになること、いずれも曖昧なまま、何となくラストになだれ込んでしまっている(ゴジラVSモスラの脚本と全く同じ問題点)。一応、マークはゴジラを受け入れ、エマは娘の大切さを実感し直すというそれぞれの改心は描かれているが、それが家族の和解に繋がったという描写が全くない。

エマのラストは初代の芹沢に通じるが、直前の家族の再生が非常にボンヤリしてるので別れが感動的にならない。あの行動がどれくらい意味があったのか伝わりにくいのも難点。

4怪獣の集合に合わせて冒頭から二つに別れていた人間パートが一つにまとまる流れ自体は良いと思うが、終盤のアクションが全体的にガバガバ過ぎる。

簡単に脱走を許すテロ集団や、子供1人殺し損ねるギドラ。ギドラに踏まれたはずのオルカがほとんど壊れていないなど、後の展開ありきの雑な演出が連発される。あの混乱の中で「ありました!」とあっさりオルカを見つけてくるモナーク兵に笑う。めちゃくちゃ頑丈なバスタブは、せめて回想シーンで一回出しとくべきだったと思う。

「怪獣との共存が人類の生きる道」云々のモンスターバースのテーマにはあまり興味がないので、劇中言及があるたびに「ふーん」と流して見ていたが、エンドロールの「怪獣のおかげで万事オッケー」は流石にやり過ぎではないか。

怪獣と目が合うシーンの多用や、距離の近さも気になった。目の前にギドラの顔→横槍の構図を3回やるのもややワンパターン。怪獣を直接手で触れる場面も多いが、ET的な見せ方はあまり怪獣を当てはめて欲しくない。あれは芹沢だけにすべきだったのでは。

事務的なアクションの引っ張りが話のテンポを損なっている。南極基地で隊長が落ちそうになる所。「挟まって動けない!」や「子供を乗せた飛行機が!」「破片が足に!」。本筋から浮いているし、緊迫感も出せていなかった。

ただ、色々と文句も言ってきたが、総じてこうしたダメさに関しては、エメリッヒ版やギャレス版のそれと質が違うとも感じている。

この二作が「過去のゴジラっぽくない」ダメさが目立ち、アメリカはゴジラを分かってないなぁと愚痴りたくなる出来だったのに対し、今作は「過去のゴジラっぽい」ダメさをそのまんまトレースしている部分が多く、良い所もダメな所も含めて、子供の頃から見慣れたゴジラになっている。初めてハリウッド版で、素直にゴジラ映画だと思えたというか。

大資本を掛けた最新エンタメな以上、ファンへの目配せだけでない面白さを目指すべきなのは当然だし、アベンジャーズのようにマニアからライト層まで広く愛されるシリーズに育てて欲しいのは勿論だが、ファン的にはこういう形でゴジラ映画のダメさを提示されると、若干文句が言いづらかったりもする。

とにかく、これだけ威勢良くお祭りバカ映画に振り切ってくれて長年の米国ゴジラへのフラストレーションが吹っ飛んだのは間違いない。VSコングでは、例えばもう少しメッセージ性を強めるとか、ゴジラの持つまた別の側面を見せてくれることを期待しています。 84点。