白瀬青

ゴジラ キング・オブ・モンスターズの白瀬青のレビュー・感想・評価

4.3
ハリウッド版GODZILLAシリーズ前作で、仲睦まじい夫婦怪獣ムートーのわが子への愛は、同じく子を守るべく奮闘する主人公夫妻のドラマパートに暗喩された。
ゴジラの領分を侵し倒される悪役怪獣と人間とに何の違いもありはしないのだと。

あれから五年を経て怪獣を表現する技術は更に向上し、表情は豊かになり細やかな仕種で身体は動き、息吹きさえ聞こえ、意思を表すのにもはや人間の言葉も通訳も擬人化も必要ではない。
怪獣は人の言葉を借りることなく、彼らそのものが活き活きと暮らし、戦い、この世界のヒエラルキーを示す。

怪獣と人間に違いはないどころか、人間は巨大な神にひれ伏す臣下かその偉大さの尺度でしかなく、主人公は怪獣である。
怪獣ドラマがメインといえばバトルがメインなのかと思うが、こちらは本当に「怪獣という生物」が主人公のドラマなのだ。
怪獣が主人公(王)で、怪獣の世界の「ブラックパンサー」をやっているような雰囲気を感じる。
(そのあたりの人間側登場人物の怪獣礼賛と悪手に次ぐ悪手にうんざりする方は少なくないとは思うが、私の知っているゴジラを見返してみてもちょいちょいシリーズ中で見かけたことがあるタイプの変人達なのでむしろ懐かしい気持ちもあった)

ゴジラやモスラなどのおなじみのテーマソング(ただし読経や祭囃子をMIXしたりとアレンジの癖が強い)に載せて描かれる神話はまさに怪獣オペラ。

惜しむべくは、美しくも衝撃的な映像のほとんどを予告やシーン画像であらかじめ見てしまっていたこと。人間・怪獣共に戦術的な喜びはあまり感じられなかったので、せめてあの映像を初めて見て圧倒されるのがスクリーンであってほしかった。
これからご覧になる方にはぜひなるべく、予告動画などを事前に確認したりせず、映画館で衝撃を受けてほしい。
白瀬青

白瀬青