okome

ゴジラ キング・オブ・モンスターズのokomeのレビュー・感想・評価

5.0
「さらば、友よ」


これが観たかった……!
これが観たかったんだよ……!!

ゴジラ、と言うか怪獣映画そのものに全く思い入れが無いにも関わらず、図々しくもそんな事を思いながら上映中結構な頻度でボロボロ泣いてました。
怪獣たちの圧倒的な巨大さと造形の美しさ、そしてそれが生きて動いていると言う事にこの上ない説得力を示してくれる重量感。
彼らが足を踏みしめ、飛び回る度に、確かな振動が体の芯まで揺さぶってくる。
耳をつんざくような咆哮、そして四つ巴に激突する迫力ときたらもうもうもう!!!
そこには「怪獣プロレス」なんて言葉に滲む、見世物や作り物である事の揶揄が介入する余地は一切ない。
人類には到底太刀打ち出来ない別次元の闘いをリアルにまざまざと見せつけられて、ガッチリと心を掴まれ感極まってしまいました。


そしてまた、今作は怪獣たちが映るカットがどれもたまらなく格好いい。
てっぺんが見えないくらいの巨大な水柱を立ち上げて堂々と現れるゴジラ、氷塊に禍々しいシルエットを映し出すキングギドラ、炎をその身に燻らせて黒煙を纏うラドン、そして美しく羽化するモスラ。
登場シーン1つとってもひたすら外連味たっぷりで、本当にもう、上映中何度スクリーンを切り取って、額に入れて飾りたいと思ったことか。

それに加えてお馴染みのテーマ曲を絶妙なタイミングでぶっこんでくるもんだからああもう!
エモい!!!エモすぎる!!!
なんだこれ!!!!
この湧き上がる多幸感はもう宗教だよ!!!
「太古の昔、怪獣たちは神だった」。
そりゃそうでしょうね!?
僕だって信仰するわこんなん。
とにかく、一番大事なその劇中の設定を完璧に体感させてくれる時点でこの作品は〝勝ち〟です。


しかしそんなビジュアル面だけに留まらず、ストーリーそのものも、東洋的な、更に言えば日本的な
神話を想起させる内容だったと自分は感じました。
怪獣たちを自然そのものと置き換えて、それを
「支配する」のではなく「畏怖しながら共存する」事を目指す。
その大筋からして山岳信仰、神奈備をはじめとする古神道を強く連想させます。

かつて(1954年)、ゴジラは人類に対し怒り狂う荒魂だった。それを殺したのが芹沢博士でしたが、今作ではモスラという和魂に導かれ、かつての敵を「友」と呼び、その怒りを鎮める事に身を捧げます。彼の共生の願いが成就し、神降ろしとして再び顕現したゴジラは、人類と共にキングギドラという災厄を討つのです。そして怪獣たちが去った後、その排泄物は豊穣の礎となる。
これらの展開に『古事記』の八岐大蛇やオオゲツヒメがモチーフとなっていたとしても、なんら違和感は無いように思います。

もちろん、作り手の方々が本当にそう意図していたかどうかは定かではありません。十中八九、単なる個人的なこじつけに過ぎないでしょう。
ただ、遠く海を隔てた場所で作られたにも関わらず、その作品からゴジラの故郷である日本の雰囲気を感じ取れたという事実が、とても嬉しい。
それは、ゴジラという作品の背景にある、日本の風土や民俗にまでしっかり理解が行き届いている事にも繋がるから。
作品が生まれた場所、そこで培われた価値観を知るという事は、込められた意図を読み取る上でとても大切な事です。きっと、それを十分に意識されていたのではないでしょうか。
だって、前述の絵作りや細かい小ネタに至るまで、そもそも今作は監督のゴジラ愛が全編通して溢れ返っているのです。

香山滋さんの作品への愛情と、平和を願うメッセージを真摯に受け取り、その上で誰よりも自分たち自身が観たかったものを、最高の形で世に送り出す。
こんな誠意溢れた、素敵なオマージュは滅多にお目にかかれません。文句なしの傑作でした。


だから、どんどん布教していきましょう。
太古と言わず、今この時。
今すぐ映画館に行けば神に逢えます。
皆で幸せになりましょう。
(映画館への) †再臨は近い†
okome

okome