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ババドック 暗闇の魔物のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

ババドック 暗闇の魔物(2014年製作の映画)
3.8
絵本「ババドック」をキーにして母親アメリアと息子サミュエルが追い込まれてくホラー。

シングルマザーのアメリアは夫をなくした傷が癒えないまま仕事と育児を抱えてる。
息子にややADHD傾向があり気の休まる暇も睡眠時間も満足に取れない日々。
疲労に睡眠不足に過度のストレスで追い詰められ、乱暴な物言い、息子に当たり散らすようになっていく。
この経緯が理解できて辛い。

アメリア自身は一生懸命やってるのに、とにかく悪循環が重なってどうしようもなくなってく展開、身内や周囲の理解が無い等、現実に誰にでもあり得る状況がリアルで嫌な怖さ。良作でした。


「ババドック」の絵本欲しいなあ…と思ったら完全受注生産で販売されたようで現在はすっかりプレミア価格。
気軽に手が出ない値段でした…残念(´・ω・`)


【 3/21 ババドックについて考察追記】
個人的な解釈です。
・アメリア自身、育児ノイローゼ寸前
・以前から息子への愛情が欠如気味
・義務と責任感>愛情
あの事故で夫の代わりに死ねば良かった、妊娠していなければ良かった、夫が死んだ日に生まれた子供なんて愛せる筈がないと一瞬でも考えが浮かんだとしても無理はない。
でもそれを彼女は打ち消して、考えないようにしてきた7年間。
それは抑圧された感情として無意識に心の底に澱のように沈殿していったのでは。

生活は遂に悪循環が重なり、抑圧されていた無意識の感情に綻びが出始める。
彼女は以前絵本等を執筆していたとの台詞があるので、絵本を作り出したのは彼女。

加えて息子なんていなくなればいい、という無意識下の欲望の代行者としてババドックという怪物を創造。
それが悪夢の具現化という形になったのだと思いました。

物語の後半の文章は「母親の中に入って大きくなる」というもの。
母親の息子への「疎ましい、いなくなればいい、殺してしまいたい」という無意識に押さえ込んでいた感情が、ババドックにより増幅。だってババドックがやっかい者を殺してくれるのだから。

意識の表層ではその感情は今まで必死に打ち消されていたのが遂に限界がきた。

ババドックという形をとったことで、自分の負の感情に向き合い、対決という形で一応の感情浄化と母性と愛情の確認が出来たため怪物は一旦鳴りを潜めます。
が、完全に消えた訳ではない。
ババドックの顔を確認したのは彼女のみ。
彼女も気がついていたのでは。
ババドック=負の感情を抱えた自分の姿かもと。
ぱふんと消えた瞬間、彼女の中の恐ろしい憑き物もある程度解消されたけれど、悪夢の種は消えていない。
夫の遺品と共に地下室で飼い慣らしている悪夢、未来を向くための夫への区切りなのか分からないけれど、今は大人しいアレが再び暴れ出さないといいと思う。