TAKU

スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!のTAKUのレビュー・感想・評価

4.5
く、狂ってる…。

アメリカのTVギャグアニメ『スポンジボブ』の劇場版である前作『スクエアパンツ ザ・ムービー』は、はっきり言ってファンムービー以上の域を出ない内容だった(主人公のスポンジボブが俳優のデヴィッド・ハッセルホフをボート代わりにして海を泳いでいたのは面白かったけど)。その続編でアニメと実写が融合している本作は、作り手たちが吹っ切れてしまったのかドラッグムービーみたいな怪作へと変貌を遂げた。アッパーやダウナー系というよりはハッパ吸ってニュートラルな状態のイカれた映像に、天丼とでも言うべき畳掛けるようなギャグの連打。一瞬ではあるが、アレハンドロ・ホドロフスキーの映画を観ているような錯覚を覚えた。ここまで吹っ切れている子供向けアニメは後にも先にもないだろう。

ストーリーは、海の底にある町ビキニタウンの住人たちの心支えであるカーニーバーガーのレシピが海賊ビアードに盗まれ、町は大パニック。バーガー店のフライ係であるスポンジボブは、レシピを探しに大冒険の旅に出る。

内容だけ聞くと、なんか普通の子供向け映画のような気がするかもしれない。実際、観る前の僕がそうだった。しかし、オープニングからその予想は良い意味で裏切られた。ジャック・スパロウ丸出しな海賊の格好をしたアントニオ・バンデラスが、魔法の本を手に入れるために、骸骨と殴り合い、腹にフックを食らって空高く舞い、言葉を喋るカモメに怒鳴る。これ読んでる人は「何のこっちゃ?」な話だが、嘘ではなく本当にこんな場面があるのだ。

だが、こんなのまだ著の口で、その後も子どもが口ポカーンどころか泣き出すような狂ったビジュアルの連続。菓子が擬人化しゲロが虹になるスポンジボブの頭の中や、宇宙の使者であるイルカ(手書きアニメの世界でイルカだけ実写のストップモーション)、N.
E.R.Dの『Squeeze Me』が流れる中でのサイケデリックなタイムトラベル描写と、ラリパッパな場面のてんこ盛り。

ボブたちが陸へ上がってからの実写パートからは、ドラッギーな画図は減るものの、まさかのアメコミヒーローモノ的な展開に。マーヴェルの緑色の巨人みたいな奴も出てくるぞ。

ギャグは10秒単位で挟み込まれ、ひとつひとつが腹がよじれるほど笑えるので死ぬかと思った。パニック状態のビキニタウンでみんな『マッド・マックス2』の格好してたり、『続・夕陽のガンマン』で流れた『エクスタシー・オブ・ゴールド』の超くだらない使い方といった映画小ネタでも爆笑。

アントニオ・バンデラスの怪演も楽しかった。演技テンションが『スパイ・キッズ』のような子供向けというよりは、『私が、生きる肌』などのアルモドバル作品に出演している時の狂ったバンデラスだった。しかし、CGキャラ相手にハイテンションな演技で、ボブをはじめとするアニメキャラに引けをとらない存在感を残していた。

テレビ版を知っている人間としては、メインキャラクターの一人プランクトンの扱いに感心した。いつもはボブが働いているカーニバーガーのレシピを手に入れようと企む悪役であるプランクトンは、レシピを盗んだ濡れ衣を着せられ、ボブと旅を共にすることになる。「チームワーク」をちゃんと発音できないほど強調性のない彼が、旅を通してお互い協力することを学んでいき、それがクライマックスで伏線として活きる展開に不覚にもうるッときてしまった。

とにかく、同じく実写とアニメがミックスしていた『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』級のドタバタとカオスでお腹いっぱいなので大満足。テレビ版の原型留めてないし、子どもに見せるような映画じゃないけどね。