Aimi

君が生きた証のAimiのレビュー・感想・評価

君が生きた証(2014年製作の映画)
4.0
なんとなく過ごしてる毎日が突然ガラリとその景色を変えてしまうことがある。
銃乱射事件で大学生の息子を失ったサムは、その2年後にはスーツから作業着へその身を包み、広い家からボートの中へと住居を移し、独りで過ごしていた。息子など最初からいないことにしていた。
ふと聴いた、亡き息子が遺した音楽がそんな彼の毎日を少しずつ色鮮やかに、音賑やかに、光照らすものにしていく。人が集まり、息子の歌詞やメロディーは人々の心を掴んでいく。
私の心もガッツリと掴まれて、小物を巧く使って流れるように切り替わるシーンを盛り上げるラダーレスの音楽の虜になってしまった。サムの心境と裏腹に人気が人気を呼んで有名になっていくラダーレス、などドラマ部分の描き方も丁寧で、ああ、良い作品だなあ。と思ってた。

中盤から、心境がガラリと変わってしまった。
変わってしまったというより、どう形容していいのかわからない複雑さが心に広がった。
それじゃああのシーンはこういうことだったのか。
じゃあこの曲たちを聴き、弾き、叫び、虜になっていたサムたちや観客たちは…?

終盤に差し掛かる頃には涙が止まらなくなっていて、エンドクレジットが終わるや否や最初から観直してしまった。で、さらに号泣。

人の心やドラマの描き方、カメラワークやシーンの移り変わり、作品内の様々なものが丁寧に作り込まれていて、ああ、本当に良い作品に出会ったなと心から思えた。
人はその真実ひとつで、物の見方がこうも変わってしまうものなんだね。最後の、歌詞のひとつひとつに心の限りを込めて歌うサムの姿が刻印のように刻まれている。
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