女性を虐げ肉体を弄んだ男たちに復讐する話だし、革命の話だし、弱者が強者を皆殺しにする話でもあるし、娼婦が一国の主になる夢のような話でもあって表現としてはこれ以上ない。
唐突に歌い出すイリーナ、映画それ自体がジョークだとしても、バカバカしさにもう一枚強気で乗せてくるとこちらも本気になる。物語を描きながらも映画は自由であり続ける、そのキャラクターの人生をダイジェストにさせない。表現とは攻めの姿勢。平然と見事に狂っているシュミット、愛してる。
拷問展示室から繋がる中世拘束衣のような服装を着させられているイリーナ、ブニュエル仕込の性癖も品がある。どこまでも俗っぽいのに戴冠式のあの強い画、長年飾られてきた歴史画のようでもあり、虚構の国に歪なリアリティが生まれてくる。
冠を授かり、無垢な魂が輝かしく勝利するイリーナのアップ。スクリーンで見るたびに毎回泣いてしまう。かつての、もう今では作られないであろう素晴らしき「映画」からしか得られない昂奮。俺が死んだら葬式で流してほしい一本。ラストの花火と共に俺を燃やし尽くしてくれ!