あきしげ

駆込み女と駆出し男のあきしげのレビュー・感想・評価

駆込み女と駆出し男(2015年製作の映画)
3.0
井上ひさしの小説『東慶寺花だより』が原作。
11年に渡り連載された連作短編集を映画化。

時代劇として一線を画す。
ファンタジックな時代劇じゃなく、
本作は現実的な生活を描いており、
当時の言葉が出てきます。

本作はスロースターター。
中盤までは退屈であって、
聞いた事ない言葉が連発。
江戸文化を知る人ならば、
楽しめるような構成だが、
知らない人はとても退屈。

中盤以降は物語が大きく変わっていく。
舞台は鎌倉の町から東慶寺に移ります。
ここから物語に引き込まれていきます。

主演には大泉洋。
医者見習いで戯作者見習い。
中村信次郎です。

医者としての腕は確かで、
戯作者としても口達者で、
修羅場をくぐり抜けます。

駆込み女は三人がメインである。

顔に傷を持つ鉄練りのじょご。
演じているは戸田恵梨香です。

ヒロイン的な立場で、
田舎娘のようだけど、
演じる戸田恵梨香は、
ともてキレイでした。

商人の妾であるお吟。
演じるは満島ひかり。

薄い眉毛、お歯黒と特徴的な化粧法。
満島ひかりの美しい顔立ちが際立ち、
その生き様すら美しく演出している。

道場の娘である戸賀崎ゆう。
演じているは内山理名です。

女剣士としてインパクトを残す。
三人の中で短い主演も印象的で、
内山理名は強さを象徴している。

登場人物が多い中でベテランも奮闘。
離縁調停人の三代目柏屋源兵衛には、
ベテラン女優である樹木希林が演じ、
江戸時代の代表敵戯作者の曲亭馬琴、
こちらも大御所の山崎努が演じます。

幕府公認の縁切り寺が舞台だが、
前半では当時の生活を表現する。

早口による聞き慣れない言葉が飛び出す。
何を言っているのか分からないほど早い。
聞きそびれると何がどうなっているかは、
分からないという事がなかったのですが。

このように当時の言葉を使う作品。
それが好きな人には堪らないです。
逆に知らない人には退屈でしょう。
中盤まではその掛け合いが中心で、
ガマンを強いられるような展開だ。

しかし、中盤を過ぎると不思議な体験をする。
それは気がついたら物語の中に入っています。
チグハグだった人物関係がようやく実を結ぶ。

東慶寺に駆け込み、
惨めな人生から脱却し、
新たな一歩を踏み、
違った生き方を選んで、
再出発する彼らに、
いつの間にか感情移入。
そんな作品である。

「べったべった、だんだん」

この言葉は本作を象徴している。
戸田恵梨香が言えばもっと良い。

RE-139
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