きぬきぬ

湖の見知らぬ男のきぬきぬのレビュー・感想・評価

湖の見知らぬ男(2013年製作の映画)
4.3
素晴らしくて震えた。

大きな湖の片側はゲイのハッテン場。ロマンを求めて湖岸の水辺に来るまだ若い地元の青年フランク。舞台はこの湖岸のみ。そこでの馴染みや出逢う人たちとの、見知ってるけど知らない人たちとの関係性のみ。皆、自動車で来る距離、気になる相手とヤレる森もある。
わざわざこんな場所で一時の性行為を求める人たちは、他人に知られたくない訳ありで孤独な人たちが多いようにも見える。それでも青年は愛を求め、ある男ミシェルに惹かれてしまう。名前しか知らない。危険な男かもしれないけれど、性愛が彼の内を占める。
青年フランクに好意を抱いた孤独な中年男アンリとの交流は居心地の良い友愛、でもバイセクシャルのアンリの方には嫉妬心があったのかもしれない。いや、孤独な彼にはそれだけではなかったのかも。アンリさんが可愛くて仕方がない。
孤独なアンリにはもしかすると欲望はあったのではと思われるけど、そのフランクとの友愛の関係は悲しくも穏やかで秀逸。アンリの抱える闇にも心打たれるけど、闇の中で危険かもしれないミシェルを求めるフランクにも衝撃を受けた。

湖にさざめく波が美しく、官能を煽る。その愛に恐れながらも打ち寄せられる。
遠目ではっきりとはわからなかったかもしれないけど、フランクには解っていたはず。彼は進んでミシェルと共犯関係に陥ったように思える。愛してくれると信じたのだろうなあ。
ただそのまま消えれば良かったのに、ミシェルはフランクの元に留まるのだ。そこに愛が無いとは言い切れない。説明的なものは一切無い、けれど、愛を求める孤独な心は感じられる。彼らの心は擦れ違い、闇にまぎれて見えなくなってしまうのだ。
きぬきぬ

きぬきぬ