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名もなき塀の中の王のBGのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
4.0
「愛情っていう形のないもの。伝えるのはいつも困難だね。だから…。」
好きだなあ、これ。山椒は小粒でもピリリと辛い。こうした作品に出会いたくて、マイナーな作品を観たりもする訳で。しかし、いったい何を考えてこの邦題にしたのか、考えた人にぜひ聞きたいもんだ。何やらカラス共が刑務所のテッペンを目指しそうなタイトルだが、全く違う。ツンデレ親子による、父と息子の言わばホームドラマである。

過剰な説明、一切なし!主人公のラブは少年院からの繰り上げ収監なんだけど、まあ手慣れたもんで。冒頭の描写一発で少年が如何にワルかを描くさまには唸りました!
とにかく、すぐキレる少年ラブ。刑務所内でも、相手が年上だろうが看守だろうが、つっかかっていく。それを気に掛ける一人の男。彼は、無期懲役で収監されるラブの実の父親だったのだ。

とにかく暴力描写のリアリティが凄い。過剰な演出がない分、余計に痛い、イタイッ!特に、ラブが絞殺されそうになった場面はたまげた。これ、本気で絞めてない?うはぁ。

ラブの心が解きほぐされるのが、やや性急に感じたものの、周囲の囚人との関係性や彼等の振る舞いなどから、一時的なものだと言うのが伝わる。1つの切っ掛けで暴発する爆弾なのだ。

最後には、ある結末を迎える訳だけど、父親のその台詞が個人的にはストレート過ぎて少し気に入らない。でも、あれで良かったようにも思えたりする。どうだろう。が、それより重要なのは、その後のラブの何気無い台詞だと、私は強く思うのだ。ラストは余韻あるショットで完璧な幕引き!文句なし!

どこまでも不器用な親子。しかし、言葉の端々に、些細な行動に、互いへの想いが痛々しいまでに詰まっている。結局は、どんなに下手で歪んだ形でも、続けることこそが対話なのかも知れない。そして、それは刑務所だけではないし、彼等親子だけの話ではないはずだ。
「知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中で、もがいてるなら。誰だってそう。僕だってそうなんだ。」
いつまでも、キミに捧ぐ秀作!
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