つるみん

名もなき塀の中の王のつるみんのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
3.9
これはやられた。

大抵、プリズンムービーって主人公のキャラクター像を手っ取り早く伝える為に入所する前のシーンや出所後の主人公の心情変化が描かれるのに本作は全て刑務所内で描かれるというある意味、挑戦的な作品。特に本作で凄いのが回想シーンなどの時間軸をいじる描写がなかったり、外部からのコンタクトがなかったりとストーリー自体を整えるための材料やテクニックを一切使わずに、ド直球勝負で挑んだということ。

それなのに主人公どころか周りを固める囚人達の心情変化の表現には驚き。そもそも本作を観る前に父親と息子という構造が頭の中に全くなかったのでヤラれた感が半端ない。てっきり脱獄ものかと。

そして作品全体を覆うのは落ち着いたノワール調なのだが、その雰囲気と逆方向にいるのが主人公扮するジャック・オコンネル。彼の持っている闇が徐々に露わになり爆発する変化は凄まじい。他にもカウンセラーや父親の不甲斐なさから生まれる怒りなど作風とは真逆のキャラクター達に本作の強弱、静と動、光と闇を見せつけられる。
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