しゅんすけ

名もなき塀の中の王のしゅんすけのレビュー・感想・評価

名もなき塀の中の王(2013年製作の映画)
4.6
「名もなき塀の中の王」

「最後の追跡」で名をあげる前に撮ったデヴィット・マッケンジー監督のドラマ。 

 暴力衝動が抑えられずに問題行動を繰り返し、刑務所に収監されたエリック。そこで刑務所ぐらしを余儀なくされる父親や、囚人を更正させ塀の外に出したがらない看守たち、刑務所のなかで勢力をはる囚人、セラピーを実施し囚人の更正を目指す青年たちのなかでもみくちゃになりながら、少しずつ人間らしさを身に付けていくお話。

 BGMほぼなし、徹底して冷たくドライな暴力描写で描かれ、何も解決してるわけではないし、決していい結末ではないのですが「いい映画を観た」という気持ちにさせられました。

 怒りを抑えられずに暴力に走ってしまうエリック、刑務所にいたため息子と会えず、何とか父親としての威厳を保とうとするエリックの父・ネビル。互いに罵りあいながらも迎えるラストのやりとりはちょっとウルッとしました。

 またセラピーのシーンもすごく良くて、一緒に参加する黒人チームがめちゃくちゃカッコいい。セラピーの教えを守り、怒りをコントロールし、エリックを優しく見守るも、親をバカにされたらやはり怒りが抑えられず、手が出てしまうという人間臭さがグッときます。

 エリックを演じる、ジャック・オコンネルのガキんちょと大人の間のような佇まい、父親のネビルを演じるベン・メンデルソーンの不良な中年感が絶妙にマッチしていました。

 デヴィット・マッケンジー監督作では「最後の追跡」より本作のほうが断然自分は好きです。顔をしかめてしまう痛い描写はありますが、冷たくも優しい、めちゃくちゃ優れた人間ドラマでオススメです。