にいにい

博士と彼女のセオリーのにいにいのレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
4.0
ブラックホールの特異点定理やホーキング放射等で名高い物理学者スティーヴン・ホーキングの人生を愛妻ジェーンの眼差しを通して描いた本作。主演のエディ・レッドメインがオスカーを勝ち取ったことで話題となった。

ホーキング博士が一生を通して研究することとなる"時間"。未だ人類が答えを出せないでいるこれこそがこの映画での主題でもある。学業に恋に友人関係と青春を謳歌する前半部分。ジェーンと出会い恋に落ちる2人を暖かいタッチで描いた前半はお洒落恋愛映画そのものである。しかし、ホーキングがALSを発症したことにより事態は一変する。幸せの絶頂は時間が止まったようなあのダンスの夜。ここが2人の人生、ひいてはこの映画の始まりである。

中盤から終盤にかけては結婚後の2人の生活が描かれる。ALSという病気がどういうものなのか、自分は知らなかった。本作ではその過酷さを直接的に描写するシーンはほとんどない。そのあどけない容姿からは想像出来ない芯の強さを感じさせるジェーンだったが、時間は残酷である。徐々に力強さが失われていくのが分かる。直接的な描写はなくとも、我々が想像し補完出来るだけの情報は与えられている(まだ実存するスティーヴン&ジェーンの了承を得たことを考えると、過酷な暮らしを直接的にまざまざと見せつけるような映画には出来ないのではとも思う)

主役の2人の演技は勿論、暖かみのある音楽や映像も2人の人生を時間を描くのに有効であった。(ホーキング博士のユーモアも忘れてはいけない)本作で描かれたのはホーキング博士の物語でなく、2人の物語であった。子供や離婚、再婚といったことやホーキング博士が成し遂げた偉業ですら本作においては構成要素の1つにすぎない。何度となく見られた時間を進めたり巻き戻すかのような螺旋の描写、最期のシーンで巻き戻された時間の着地点はあのダンスの夜だった。

時間が持つ残酷さと希望を2人の人生を通して描いた本作、思ってた以上に面白かった。
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