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博士と彼女のセオリーのScreen7のレビュー・感想・評価

博士と彼女のセオリー(2014年製作の映画)
4.1
ラストシーンが素敵な映画って一生忘れない。
スティーヴンの学説としても、余命宣告された彼と彼女の人生としても、今作は"時間"が大きなテーマ。
その時間の流れに逆らって、この物語の重要なシーンを流したエンディングは、本当に素晴らしかったです。

エディ・レッドメインの演技がとにかく繊細。
喋り方、指と手の動き、歩き方、体の傾き方、顔の僅かな震え、表情…そのすべてが本当に丁寧に表現されていて。圧巻の演技力でした。

彼を支える"彼女"であるジェーンの話を基にしてこの映画は作られているのですが、彼女の気持ちになって観ると、もう心に響くものが大きすぎる。
ジェーン役の女の人見覚えあるなと思ったら、『ローグ・ワン』の主演の方だったんですね!
フェリシティのグリーンの瞳にブルー系の衣装がよく似合っていて綺麗でした〜〜
『ファンタスティック・ビースト』のエディに
『ローグ・ワン』のフェリシティだなんて
去年の秋冬映画で話題となった2人ですね!

前半はラブストーリーっぽいです。
舞踏会のシーンが好き。
お酒飲んで花火見てメリーゴーランド乗って満天の星空の下で踊って…って最高にロマンチック。全てが絵のように美しい場面でした。
花火が特に綺麗だったな。

後半は、病との闘いが主に描かれています。
運動ニューロン疾患になってしまったスティーヴン。
余命は約2年。治療法もなし。
2人で病と闘おうとする姿に胸が熱くなりました。特にジェーンが前向きで強いですよね…!
勿論、辛いシーンも多かったです。
スティーヴンの博士祝いのパーティーで
階段登ろうとしたときに、息子のロバート(まだ赤ちゃん)を見て「心配いらないよ」ってシーンが辛かった、、、
病を強く乗り越えようとしてきた2人が
はじめて挫折して涙を流すシーンも印象的。
まさに、"遣る瀬無い"という感じ。
どうすることもできない事実を目の前に、切ない表情を浮かべる2人に、胸が痛くなりました。
スティーヴンの声が出なくなってからも、2人のやりとりからは愛を感じます。
文字ボードを使ってコミュニケーションをとるのですが、手も使えないから目線と瞬きで意思疎通を図るのです。
嬉しいときも、悲しいときも、目を見て心で会話しているという感じで…

意外にも、映画的ではない現実的なエンディング!
すごく考えさせられました。
スティーヴンと結婚するという決断とジョナサンと再婚するという決断。
重大な選択をしなくてはいけないジェーンも大変だけど、「僕は理解するよ 君に手助けが必要で 誰かがそれに応えてくれるなら 僕は反対しない」と言ったときのスティーヴンの気持ちを考えると切なすぎる…

レビューの最初にも書きましたが、ラスト10分。
時間が逆戻りする回想シーンは特に感動的です。
この映画に描かれているのは彼らの人生のほんの一部でしょうけど、私はもうこの回想シーンで全てのシーンを思い出して、わぁって気持ちでした…
スティーヴンがアメリカの授賞式で話しているときに、ペンを拾う自分の姿を想像したのも印象的。
ほんの数秒なのですが、この一瞬の想像にどんな意味があったのか考えると、このシーンすごい深くないですか…?
あとは、冒頭とも繋がる、ジェーンが「いつも眼鏡が汚れてるのね」と言ってレンズを綺麗に拭くシーンも好きです。

エンドクレジットで、ホーキング博士の研究テーマである"宇宙"が映し出されていて美しかったなあ…
"宇宙論者は何を信じるか?"
スティーヴンは、彼女と出会ったときに宇宙の話をしました。
宇宙のすべてを説明するたった1つの方程式を探し求めている、と。
宇宙で始まり宇宙で終わるなんて素敵です。

"時間の本性とは何か?"
大切な人と過ごした大切な時間。
" theory of everything "に込められた、2人の愛。
愛おしくて儚くて心に残るものがある、素敵な映画でした。
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