TAKU

ストレイト・アウタ・コンプトンのTAKUのレビュー・感想・評価

5.0
最高!!!! マジ最高!!!!!! 超マジ最高!!!!!!!!!!!

高校生の時にヒップ・ホップグループN.W.A.のグレイテストヒッツを聞いてヒップホップの楽しさに目覚め、それがきっかけでカニエ・ウエストやケンドリック・ラマー、パブリックエナミーといったアーティストだけでなく、RHYMESTERなどの日本のヒップホップにも出会い愛聴している身としては、N.W.A.の伝記映画が作られたというのは『フォースの覚醒』以上の出来事であり、なんなら『フォースの覚醒』の数千倍も期待していた。

試写会で一足早く観た感想としては、エポックメイキングな大傑作だった。ヒップホップ映画としても、音楽伝記映画としても、そして青春映画として見ても新たな金字塔が生まれたと言っても過言ではないだろう。

僕の今年のベスト1は『怒りのデスロード』という考えは揺るがないが、 これでベスト2は決まった!!

内容はギャングスタラップの創始者の1人であるヒップホップグループN.W.A.の10年に及ぶ栄枯盛衰を描いた映画だ。本作にコメントを寄せている長谷川町蔵氏のヒップホップ版『グッドフェローズ』という例えは言い得て妙だ。

ストリートに住む若者がラップを武器に現状を打破しようとする映画はこれまでにもたくさん作られてきた。『8Mile』に『ハッスル&フロウ』、日本であれば『サイタマノラッパー』シリーズ。しかし、本作がこれまでのヒップホップ映画と一線を画しているのは、ソウルやロックではなくなぜラップだったのかということを正面から描いているところだ。当時のヒップホップが黒人としての誇りを訴るようなラップが全盛だったのに対し、N.W.A.のラップはドラッグを売り、女はコマし、気に入らない奴は撃ち殺すギャングの日常を歌っていた。しかし、彼らは自分たちを取り巻く日常を告発しただけだ。腐敗したコンプトンの現状、そして黒人というだけで逮捕・暴行する警察官。まさに彼らはN.W.A.(Niggaz with Attitude=主張あるニガー)だったのだ。

しかし、N.W.A.は決して過去の存在ではない。アメリカでは今も無実の黒人が警察官に殺されるという事件が起きている。8月にミズーリ州セントルイスで警察官が黒人青年を射殺し、住民たちにゆるデモが起きた。本作では警察官の横暴、そして92年のロス暴動などの現代とシンクロして見れるシーンを設けることでN.W.A.を再定義してみせたのではなかろうか。

そして、N.W.A.の「言いたいことを言わせてもらってるだけだ」というスピリットはアメリカだけの出来事ではない。国会議事堂前でラップを用いてシュプレヒコールをしている若者たちの姿を見ていると、N.W.A.の精神は普遍的なものであると思うのと同時に感動すらを覚える。

ただ、これまで書いてきたヒップホップ云々は別にしても、音楽映画として非常に楽しめる映画であるのは間違いない。とりわけ、N.W.A.のメンバーだったアイスキューブとDr.ドレが製作に関わっているためか、ライブ場面はどれも熱狂必至。ライブそのものをパッケージングしたかのような熱量に圧倒される。アイスキューブのライブパフォーマンスと観客のリアクションの臨場感たるや。音楽のライブに行ったことがある人なら「自分は今N.W.A.のライブを見ている!」と錯覚してしまうはずだ。

ライブ会場で警察官に包囲されながらも、彼らが警察批判ソング“Fuck The Police”を熱唱する場面の暴動に加わりたくなるかのような高揚感は是非スクリーンで味わって欲しい。

キャスト陣の演技も十分に素晴らしい。N.W.A.のメンバーを演じた5人は、音楽シーンを変えた伝説的グループという高いハードルを見事クリアしていた。特に、ジェイソン・ミッチェルの名演は特筆ものだ。N.W.A.の栄枯盛衰を象徴するイージー・Eという大役を、観客にまるで本人がいるかのように思わせるくらいの自然な名馴染みっぷりで演じてみせた。また、アイスキューブ役のオシェイ・ジャクソン(アイスキューブの実の息子)は、この親にしてこの子あり。父親譲りの演技、歌唱力、堂に入ったライブパフォーマンスが光っていた。N.W.A.脱退し映画俳優に転身した後の場面の彼の顔が、アイスキューブと似すぎていたのには笑ってしまった。顔が似ていると言えば、劇中で登場するラッパーのスヌープ・ドッグと2PACの顔がそっくり過ぎて、どこから連れて来たんだ?っと感心してしまった。

また悪徳マネージャー、ジェリーを演じたポールジアマッティの演技も相変わらず良い。彼は、N.W.A.の売り上げを騙し取っていた人間にも関わらず、本作ではメンバーと共に欲望に溺れてしまった人間として描かれていたのは良心的だと感じた。Eとジェリーが袖を分かつ場面は切ない気持ちにさせれる。

多分、これを読んでいる人の中には「アンタがヒップホップ好きだから絶賛しているだけだろ?」と思う人もいるだろう。ご心配なく。男たちの友情と別れを描いた青春グラフィティとして非常に優れているので、ヒップホップを聞いたことのない人でも1本の映画として楽しめるはず。そのことの証明か、今回の試写に一緒に行った友人(ヒップホップはエミネムやスヌープドッグをたまに聞く程度)は、見終わって「最高だ!!。もっとヒップホップを聞いてみたくなった!」と絶賛していた。

まだ、興奮醒め止まぬ状態なので、公正な判断ができていないかもしれない。しかし、これだけは言える。しばらくはこれを超える音楽映画は現れないだろう。

今日公開の『フォースの覚醒』がどう転ぶかわからんが、『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観ずして、2015年のベストは決められない!
作り手・演者たちによるN.W.A.愛に満ちたリリックに圧倒されろ!!
FUCK THE POLI~CE!!!!