森泉涼一

ストレイト・アウタ・コンプトンの森泉涼一のレビュー・感想・評価

4.3
彼らがいたことによるラッパー界への影響力は底知れないものがある。今から約30年前の1986年、コンプトンで「N.W.A」が誕生し彼らは警察に向けての暴力的なリリックで社会に抵抗する。
「FUCK THE POLICE」という1曲は今も尚、地域によっては流せないといわれた禁断の曲だが、本作では彼らがなぜこのリリックで世間に訴えたのかというのが焦点にあてられている。
製作には「N.W.A」のメンバーで現在も絶大な人気を誇るDr.DreとIce Cube。更に監督は「交渉人」のF・ゲイリー・グレイだが彼は「N.W.A」メンバーのMVも担当している。そんな面々が関わって完成された本作は伝記映画としての事実を伝えるだけではなく遊びのフィクション部分もファンの心を掴むようなカッコよさとカリスマ的センスの背景が窺えるだけに1秒たりとも見過ごせない。
伝記部分で中心となるのが製作で関わった二人と病気で亡くなったEazy-Eの3人。衝突と友情が表裏一体のような固い絆で結ばれ、自身のプライドが強く協調性も強い。仲間が圧倒的なラップを魅せれば自分も触発され、悲劇に見舞われれば共に悲しみ、これまで多くのラッパーたちの伝記映画が公開されたがここまで仲間意識が強いグループは多くないだろう。
「N.W.A」の伝記、メンバー個々の伝記が万遍なく散りばめられた本作はヒップホップの歴史を頭にいれておけばより楽しめるが、本作を通して彼らを知りながら歴史の一部を学べる楽しさもあり、初心者でも十分に楽しめる余地はある。
対照的な見方ができる映画だが、これも完成度が高い証拠だと感じる。