OASIS

サヨナラの代わりにのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

サヨナラの代わりに(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

筋萎縮性側索硬化症を発症した女性と、彼女の元に面接にやって来たヤンチャな女子大生との友情を描いた映画。
監督は「最後の初恋」等のジョージ・C・ウルフ。

後天的な障害を描く作品はその人物のそれまでの人生が順風満帆なほど観ていて辛くなる。
本作も少々アクロバティックではあるが、障害を持ってしまう前と後とで180度変化してしまう主人公の心情や、周囲の感情等言葉が詰まってしまうほどのいたたまれなさを感じさせるものだった。
実話ベースでは無く小説を基にしているという点でどうしてもフィクションとして見てしまうし、終盤に向かうにつれて泣かせにかかろうとする傾向は目立ってくるが、手や指先を使った繊細な演出が印象的で強引さや無理矢理さは感じなかった。
普通に良い映画。
二人でピアノを弾くシーンなんて、あんなの絶対泣くわっていうね。

弁護士の夫やセレブな友人達に囲まれながら何不自由無い生活を送っていた妻ケイト。
しかし、そんな彼女が突然ALSと診断され誰かの支え無しでは生きられない身体となってしまう。
冒頭にも述べた様に、後天的な障害が題材の作品はそれまでの過程が重要だと思うのだが、この映画ではそのほとんど丸々をすっ飛ばしてオープニングクレジット中にそこを描いてしまうという荒技が使われていて随分潔いなと思った。
そして直ぐに舞台は1年半後へと移り、そこには自分では満足にメイクすら出来ないケイトの姿が映し出されていて、いきなりかなりの落差を見せてくる。

事故や発症までを丁寧に描いて行くものも確かに手堅い話運びではあるが、そこまでをダラダラと描くよりかは、まず障害ありきで始まりその状態から遡って人物像を浮かび上がらせて行くほうがより過去を想像し易くて色々と考えてしまう分エモーショナルな部分が刺激されやすい。
また、ケイトが「この人ALSになる前は相当に気が強かったんだな」と思わせる人柄で、そんな彼女が徐々に衰えて弱々しくなっていく様子が丁寧に描かれて行くのでそのギャップで尚更悲運さが増す。
そんな気丈で芯の強い役柄にヒラリー・スワンクがハマり過ぎるし、呼吸の仕方や筋力の衰えを感じさせる身体作り、そして演技が上手過ぎてこっちまで息苦しくなって来るレベルだった。

面接にやって来た女子大生のベックも、ケイトと関わる内に髪型やメイクも抑え目になっていったりとお互いが影響し合って行く過程も良い。
ピアノを弾くのが好きなケイトとバンドで成功する事を夢見るベック、そして一人の夫を愛し続けてきたケイトと何人もの男と関係を持って来たベックという、対照的でありながらも共通項も持ち合わせている二人の関係性も「最強のふたり」を思わせたりしてそのやりとりがどうしても暗く硬くなってしまいがちな映画全体の雰囲気を柔和なものにしていた。
ベック役のエミー・ロッサムはあまり知らないが、初登場時のパンキッシュな感じよりも断然ラスト付近のナチュラルメイク風な顔の方が、ちょっとエミリー・ブラウニングにも似てて可愛らしかった。

原題は今のあなたは本当のあなたじゃないという意味だと思うが、それが「本当のあなたを見てくれる人を探しなさい」というケイトからベックへの最期の言葉と重なって心に響いた。
ケイト夫の浮気は決して褒められたものではなく「本気で肌を重ね合いたかった」という言い分も普通は「何言ってんだこいつ」となりそうではあるが、映画の冒頭の生々しいベッドシーンやベッド上の穏やかなケイトとベックの獣のような激しいファックを交互に描くシーン等が、愛はあってもセックスの問題は切り離せない事を物語っていてそこに好感が持てた。

人工呼吸器を付けるか付けないかを判断する段階まで既に来ているのにその状態で病院から家に帰るとなると、搬送するまでに相当状態が悪化するかあるいは車内でそのまま息を引き取ってしまう可能性もあるのでは?と若干の疑問はあった。
米では近親者ではなくても最期の選択を委ねる事が出来るんだなと勉強にもなった。