メントール犬佐

サヨナラの代わりにのメントール犬佐のレビュー・感想・評価

サヨナラの代わりに(2014年製作の映画)
4.0
正直、気に入らないところも沢山あるし好みは分かれると思う。あと30分長くしてでも、もっと2人が信頼を積み上げていくエピソードがあったほうが良かったろうし、邦題が言いたいんであろうエンドロールの歌は個人的には実に出来が悪くて興ざめだった。しかしこの映画はヒラリー・スワンクの驚異的な演技力でもって欠点を補って余りある。ALS(筋肉への伝達機能や筋肉自体の萎縮を引き起こす難病)によって徐々に失われていく運動能力、思うように喋ることすら出来なくなり、やがて呼吸機能の低下がじわじわと命を魂を奪っていく様子が、本当に彼女は病気なんじゃないかと思ってしまうほどリアル。病気は違うがマイ・レフト・フットのダニエル・デイ=ルイスを見た時くらいの衝撃でした。劇中ほとんど激情を見せず、あくまでも高貴で聡明な女性として最後まで静かに病が奪っていくものを受け止めていく彼女の姿は素晴らしく美しかった。彼女の演技があったからこそ、エピソード不足であるにも係わらず、どうしようもないダメ人間で、住む世界が違いすぎるエミー・ロッサムが心を寄せていき彼女から何かを受け継いでいくという所も説得力を持ったし、最後のダンナのエピソードも。。。あれは評価が分かれる所だと思うけれど、僕は何となく許せてしまった。まさに「もう、いいよ」と。ある意味で高潔すぎて他人を寄せ付けない主人公でもあるので彼が辛かったのも理解は出来る。彼女はきっと発病する前から孤独に生きており、だからこそプロの介護人を望まず「話をきいてくれそうな」トンデモ女子を選んだのだ。何だかその理由も哀しいけれど。エミー・ロッサムはのびのび演技をしていたし、序盤の超クソビッチからの変貌は唐突すぎる気もする(ここらへんがエピソード不足なんだよなぁ)が見事。2人のシーンは美しすぎて切なすぎて目が離せなかった。ヒラリー・スワンクの演技以外に特筆すべきところはあまり無いのだけれど、かといってベタベタな感動の押し付けがましさも無く、家族や友人たちなど周囲の環境の問題も描かれるけれど、決して断罪するだけというわけでもなく、良い面も悪い面も僕は結構リアルだなと思いました。家族や友人が不治の病に犯されて困惑だってそりゃあするだろうし。

地味だが良心的な良い映画でした。劇場のほうがヒラリー・スワンクの凄みと2人の美しさが伝わると思いますので是非。