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ムーンライティングのTOTのレビュー・感想・評価

ムーンライティング(1982年製作の映画)
4.1
なんて完成された面白さ!
ムーンライティングとは不法労働のこと。
祖国を離れ、ロンドンの社長宅のリフォームにやってきたポーランド人男性四人の悲喜劇。
ジェレミー・アイアンズ演じるノヴァクが次第に専制君主化していく様とポーランドの政治的な背景の暗喩の妙。

妻の為に高収入をと不法労働を請け負うことにしたノヴァクは唯一英語が話せるためにリーダーを任される。
しかし、仲間には祖国に戒厳令が施行されたことを言えず、妻と社長の浮気も疑い、金も尽きて万引きを重ねながら次第に独善的になっていく。
溜まりに溜まった四人の鬱憤が静かに炸裂するラストがクール。

何度直しても倒れてくる梯子、公衆電話で電話をかけようとしたら子供に電話ボックスのガラスを割られ、大枚をはたいて買ったテレビが映らない、盗んだ自転車の色をペンキで塗り替えたのに雨で色落ち。
四人が異国で直面する小さなイライラ描写のブラックなユーモア。
面白くてやがて悲しい、ポーランドの歴史の一角を鮮やかに照らす傑作。
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