群青

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックスの群青のレビュー・感想・評価

3.9
2017年劇場鑑賞映画22作目。
IMAX3D字幕で。


ついにやって参りました、MCU第15弾!
MCUに旋風を巻き起こしたアウトローたちのシリーズの第2弾でもある!


前作があれだけ好評だと、プレッシャーはかなりのものだろうけど、ジェームズ・ガン監督はそれをものともせず、見事に続編を作り上げた。早速、第3弾の制作が発表され、売れっ子監督の仲間入りだ。これしか代表作ないけど。スーパー!はあれだな。ちょっとニッチだと思うし笑


思えば、このシリーズはMCUの中でも特異な存在だ。他の作品はキャラも増え地球が舞台のため、単体作品にも関わらずクロスオーバー色が強くなっていた。しかしガーディアンズは宇宙の彼方の出来事で、出てきたとしてもインフィニティ・ストーンとかサノスとか、名詞くらい。
それなのにMCUの中でなくてはならない存在感も放っていて、ハッキリ言ってこれは異常なことである。

これは完全に監督の手腕だと思う。
他のどのシリーズも、同じキャラクターのシリーズの全てを監督した人はいない。人気なキャップだって、人気を押し上げたルッソ兄弟は2からだし、MCUの旗揚げとも言えるアイアンマンの監督ジョン・ファヴローは1,2の監督で3はやってない。しかも彼は2の後、シェフという映画を作り、それでは監督脚本主演をやってのけた。おれは自由にこうしたいんだ!というメッセージとも取れる笑
アントマンでは1と2で同じ監督がやる予定だが、元々1はエドガー・ライトが監督するはずだった。友好的な変更だったそうだが方向性が違っていたんだろう。
アベンジャーズ1,2をやったジョス・ウィードンなんて、2の後、燃え尽きたのか一旦MCUから離れている(次のインフィニティ・ウォーではジョン・ファヴローやルッソ監督と一緒に写真に写ってたからまた戻ってきたのだろう)。

この監督の変更についてはあの魔王ケビン・ファイギがシリーズ全てを統括しているからだ笑 整合性とクロスオーバーという要素で言うと、限りなく強力なリーダーなのは間違いない。しかしそれぞれの監督からすると厳し制限がまとわりついているのは明らか。
そりゃそうだ。クロスオーバー要素は勿論のこと、単体シリーズでもMCUという壮大なユニバースでも、次に残る謎を作らなければならない。自由にやりたい監督にとってこれだけ大変なことはない。

しかしジェームズ・ガン監督は次回作の3の監督もすることが決まっているし、1や今回の2もなんなく制約をクリアしている。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが地球が舞台ではないためクロスオーバーさせるのが難しいから、という理由もあるだろう。しかしマーベルからいちゃもんをつけられたことがないとのことなので、多分この人は天才なんだろう笑


ということでやっと本題だけど、リミックスという邦題は言い得て妙なもんで、1の完全なるアップデートになっている。

ギャグもストーリーもキャラも音楽も前作比150%になっている。すげえよ、これは。

特に白眉はオープニング。オープニングにして既に白眉なんだけど。いや本当にそう笑
前作はあの、めちゃくちゃかっこいいオープニングがあった。アレを超えるオープニングなんてそうそうない。しかしのっけから超えてくるのでうおおい!となる。
ジェットコースターの最初が急降下のように、始まったらいきなりなのだ。文字通りジェットコースターのようなライド感が味わえる。

また、自分はIMAXで観たのだが、この作品は色彩がとても綺麗。前作の宇宙空間も綺麗だったが、今回は惑星が綺麗。
ソヴリンの目にキツくない程度の金色や、気づいたら白銀の世界が広がっている。
中盤に行き着く惑星のカラフルさや、敵の吐く息すら七色でうっとりする(臭そうなのに笑)。
とにかく、劇場の画面一杯で観ることの楽しさを感じさせてくれるのだ。

そしてギャグ!
これがもうキレッキレ!笑
5分に一回は笑わせようとしてくる。
デビッド・ハッセルホフやナイトライダーがが分からなかったことは悔しいけど、普通の人が観ても爆笑出来る場面が沢山ある。個人的にはワープした後のベビーグルートが良かった。あと指笑

しかも凄いのが、アクションやギャグでかなりバカな事をしているのに、それをあまりバカっぽく見せず、納得出来る形で伝えてくること。そして、そうして伝えてくることが驚く程ド直球なこと。実はこれがジェームズ・ガン監督の最大の持ち味だ。


前作は主人公ピーターの子供時代の後悔と、ひょんな事からできた仲間や敵の倒し方など、それらの要素が全て一点に収束するラストになっており、とても気持ち良かった。
つまり、それまでにキャラクターが放った何気ないセリフや行動を積み重ねて、そのキャラがするであろう行動をとったり、言うであろうセリフを言ったりする。それがギャグであっても泣けるようなシーンでも、積み上げがしっかり出来ているから突拍子なく感じない。
最終的には、更にその積み上げを普遍的なメッセージに繋げているのだ。

前作ならば母との決別による成長と、途方もなく広い宇宙でかけがえのない仲間を作ることだった。
今作はそれを一歩進め、ピーターの父との関係、ガモーラとネビュラの姉妹関係、ロケットとヨンドゥの外れ者同士の関係、ベビーグルートとガーディアンズの面々の親子関係、など様々な角度から家族とは何か?の掘り下げを行なっている。

中でもベビーグルートのみんなからの愛され感が観ていて非常に温かい気持ちになる。
どんな激しい戦いをしていてもベビーグルートに返事をしたり、反応してあげたりする。ガーディアンズの面々が親としてベビーグルートに接しているのだ。
ドラックスは元々ストレートに自分の気持ちを表現するやつだったので、仲が良くなってからはより歯に衣着せぬ発言が逆にギャグになってる笑 今回のドラックスは完全にギャグ担当だ笑
ピーターの地球の音楽の浸透具合も良かった。ロケットがクイルの音楽ない?って聞いたり、ピーターの音楽に鼻歌で歌っているのだ!
それにガモーラはピーターの地球での幼少期のあるエピソードが好きだったりして、あ、1からみんな更に打ち解けてんだなって分かるようになってる。
こういう、さりげない1から2のキャラの変化がすごくいい。

それらの家族関係を今回はピーターと父との関係性に集約させている。前作の収束具合も上手かったが、今作も上手い。上手いよ。マジで。あのシーンよ。あの無音で流れるシーンでブワッと涙が出ました。さすが。


オマケ映像は数の大盤振る舞いで、ここまでサービス精神旺盛だと、逆に申し訳ないって思った笑 最後の最後まで楽しませてくれた。


と、ここまで書いたけど…実は…どうしても納得出来てない、というか咀嚼出来ていない部分がありまして…大きく二つあるんだけど。


一つ目はそれぞれの家族関係をピーターとその父の関係に収束させるのは大変良いんだけど、余りに身内すぎてギャラクシーをガーディアンしている感が薄い。
前作は一つの星の危機として、明確に悪玉を倒す。という感じだったけど、今回は間接的に銀河全体がやばい!って感じになって、中心は身内の話なので、スケールが小さく感じる。一応いろんな星の危機を描写してるけどなんだかうまく伝わってこない。ガーディアンズがこのままじゃ銀河全体がやばい!というのは分かってるけど、今まさに銀河全体で異変が起きているとは知らない。これに気付いていたらもう少し納得出来たかも。例えば、敵が他の星の様子を見せて、見ろ、これが私の計画だ。素晴らしいとは思わんかね?とか言うとかさ。

もう一つは完全にネタバレだから詳しく書けないけど、今作の敵のせいで前作のあるキャラの想いが完全にないがしろにされてしまったこと。あれだけキラキラしていたあのキャラが報われていないってマジかよ…ってなった。
しかしこれは逆にいうと、今作で一番美味しいところを持っていくあのキャラの旨味をなくしてしまうことと同義なので、如何ともしがたい感覚になる。あっちが立てば、こっちが立たない。難しい。


ということで、惜しい。完全に諸手を挙げて喜ぶことが出来ないのが残念無念。いや本当に傑作だと思うんすよ。でもなんだかなぁって思ってもいます。ハイ。


次はスパイダーマン ホームカミング!
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