ユンファ

オデッセイのユンファのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.9
「オデッセイ」は、火星に一人残された植物学者のサバイバルを描いた映画だ。
当然ながら、果たして彼を救出出来るのか、というサスペンス要素はあるが、それは物語のクライマックスに過ぎず、作品の主題ではない。
ゴールデングローブ賞コメディ・ミュージカル部門の作品賞を受賞していることから分かる通り、これは紛れもないコメディ映画だ。

主人公に残されたのはわずかな水と食料と、古臭いディスコミュージックのみ。
それでも彼が希望を捨てずにいられたのは、ユーモアを忘れなかったからだ。
笑わせる対象のいない世界で、ひたすら彼は皮肉やユーモアを言い続ける。
ユーモアの対象は自分自身であり、彼にとって「笑い」は生きるためのクスリなのだ。
そうして様々な困難や、NASAの無理難題を、乗りきっていく。その姿は、まるでベテラン芸人だ。
ラストには一世一代の芸を披露し、世界中が彼に拍手喝采する。

私たちは文明社会に生きているから、いろいろな物に囲まれている。
おかげで生活は便利になったが、いざとなれば、水と空気と食い物があれば、人は死なずにいられる。
火星だろうが、宇宙だろうが、私たちは生きていけるのだ。
知恵と勇気と気晴らしの音楽と、ほんの少しのユーモアがあれば。
ユンファ

ユンファ