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オデッセイのdm10foreverのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.3
【1mm】

「世界の歴史なんて1秒、1mm、1gあれば変えられる」なんて、どこかで聞いた台詞だけど、まさに人の運命なんてそんなもんなんだろうな・・・と、まざまざと考えてしまった。

「もし・・・」「仮に・・・」

火星探査中に発生した不慮の事故が原因で、たった一人取り残された主人公。言い出したらきりがないくらい絶望的な状況。
生き延びるために必要な酸素、食料、水等々は明らかに限りがある。
宇宙飛行士という設定上、あらゆる知識は一般人とは比較にならないくらいのものを持っているとしても、物理的に不可能なものはどうしようもない。
しかし、主人公のマークは諦めることなく一つ一つ問題をクリアしていく。

以前見たトムハンクス主演の「キャストアウェイ」は無人島に一人きりという設定だったが、あの過酷な状況すらも「地球上で水も食料もあるなら、あとは知恵と精神力さえあれば生き延びることは可能」とすら思えてしまうほど。

物語の主軸となるテーマ自体はもの凄くシビアなのに、なぜかタッチは明るい。
勿論演出のせいもあるだろうけど、マットデイモンの立ち居振る舞いが、必要以上に神妙にならないバランスを保っていた。
それは単に物語の色合いというだけではなく、一人火星に取り残された人間が、最後の砦として「平常心」を保ち続けたからこそ成せる業でもあった。
どんなに過酷な状況に置かれても決して自暴自棄にはならずに、ただ「生きて帰ること」だけを頭に置いて行動していたからこそのポジティブシンキングだったのだ。
限られた資材と自分の知恵だけで切り開いた「火星農場」が不慮の爆発で全壊したときも、彼は決して腐ることなく「生きること」を選択した。

最後は「気力」がものを言う。どんなに物資が万端に揃っていても、生きることを前提に物事を進めなければ、そこにはたちまち死が襲ってくる。
ましてや「1秒」「1mm」「1g」の判断を誤っただけで瞬時に死に至るような極限状態であれば尚更だろう。ネガティブな考え方は徐々に死をも容認していく。

だからこそこの作品は決して「明るいサバイバルライフ」を映画にしたのではなく、極限に置かれたときに人間がいかに生き延びるのかをリアルに追求した設定であったのだと言える。そしてそこにあえてポップなタッチを織り交ぜたことで、より過酷な現実とのコントラストが際立っていた。

とにかくラストまでハラハラドキドキな展開なのにマークは努めて前向きに行動する。状況が絶望的であっても・・・。
だからあのラストは、結果だけみれば「お決まり」かもしれないが、やっぱりグッとくるのだ。
「もう頑張らなくても大丈夫」
マークの心の解放を考えたとき、ちょっと泣けたな。


あと、ジェシカ・チャスティン。
やっぱり彼女はできる女が似合う。昨年の「女神の見えざる手」から超ファンになりましたが、今作も良かった。ガッツリ宇宙服を着ている姿すらセクシーに見えてしまう僕はかなり重症か?

出てくる用語は専門的だし見ていて結構辛い場面もあったけど、ラストで救われた感じがあって結構好きですね、これ。
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