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オデッセイののらのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.0
不慮の事故で火星に取り残されたマット・デーモンが、次の補給船が来るまでどうやって生き延びるのか?というサバイバル映画だが、本作の特徴はサバイバルものでありながら悲壮感が無く全体として軽快なタッチで描かれる点にある。

また劇伴が70年代のディスコ・ミュージックを中心にして、歌詞と主人公の状況や感情がリンクさせる事で作品を明るいトーンにしている。そしてその明るさの積み重ねが後半の絶望的な展開での主人公の追い詰められていく絶望感に寄与している。

話は面白い一方で映像的に微妙な点が何点かある。例えば火星がどう見ても中東辺りの荒野にしか見えない。また火星で着ている宇宙服(俗に云うノーマルスーツ)が未来的なスマートなデザイン(ヘルメットにはソニー製らしきアクションカムにバックパックにはGoProが付いている)にも関わらず宇宙遊泳用の宇宙服が旧態然としたオールドスタイルのものだったり、火星へ行くための宇宙船ヘルメスはガラス張りの重力空間が搭載された未来的な作りにも関わらず、火星への補給物資を運ぶロケットはサターンロケット系のデザインになっている。一方でコンソール類の UI デザインやコントロールルームのデザインなどはモダンで美しいだけに、時代感のチグハグさがノイズに感じてしまう。

火星で漂流するという話を、リアリティー路線にも関わらず明るく描いているのは切り口として新しくてよい。またハード SF 寄りの作品としてもテンポが良く140分という比較的長めの上映時間にも関わらず飽きずに見ることができ非常に良い映画になっている。
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