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オデッセイのYYamadaのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
3.8
【戴冠!ゴールデン・グローブ賞】
 ~オスカー前哨戦を制した作品たち

◆第73回(2015)G.グローブ作品賞受賞
 (ミュージカル・コメディ部門)
◆同年のアカデミー作品賞
『スポットライト 世紀のスクープ』

〈見処〉
①「70億人が彼の還りを待っている」
・『オデッセイ』は、2015年に公開されたSF映画。原題『The Martian』は「火星人」を意味するが、邦題は日本人が作品内容を想起しやすいように「長い冒険旅行」を意味するタイトルに。
・本作の舞台は火星。NASA(アメリカ航空宇宙局)による有人探査計画「アレス3」のクルー達は、火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまい、死亡したと推測されるワトニー(マット・デイモン)を置いて、火星を去ってしまう。
・しかし、奇跡的に死を免れていたワトニー。酸素は少なく、水も通信手段もなく、食料は31日分という絶望的環境で、4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、あらゆる手段を尽くしていく…。(eiga.comより抜粋)
・本作は、Amazon自費出版の大ベストセラー小説「火星の人」を「SF映画の巨匠」リドリー・スコットが演出。
・火星に残された、たった一人を救うために世界が団結する本作に対して、本国アメリカでは「Bring him home」(彼を家に連れていく)のフレーズを付して広告展開。日本では「70億人が彼の還りを待っている」と、より具体的なキャッチでプロモーションを行い、興行面でも成功(35億円)を得ている。邦題ネーミングを含め、日本の配給会社の巧さが光る一作である。

②「感動のツボ」は何処に?
・本作は一概のSF映画であり、メロドラマ調の「泣かせの演出」はないながら、非常に感動的な作品となっている。
・「人はなぜ感動するか?」を調べてみると、本作と多くの点で合致している点に気が付いた。

◆驚きの感動
・死亡したと思っていたワトニーの生存を確認した、作中のNASAスタッフやクルー達の歓喜の姿が、我々鑑賞者にも感動の伝染。

◆達成の感動
・絶望的な環境のなか、自らの生存のために「水の生成」「食物の栽培」「通信の確保」…一つずつ課題を克服するワトニーの姿に「努力をした人物が報われる」ことに胸アツにさせられる。
・また、ワトニー救出プロジェクトによって、人類が同じ目標達成を共有出来たことも感動的だ。

◆充足の感動
・1年以上に及ぶ、たった1人による「火星の生活」のなかで、生きる希望を持ち続け、日々の生活のなかに意味を見つけていく姿。「前向きさ」と「笑い」は大切であることが思い知らされる。

◆回帰の感動
・ワトニーとクルーの再開の場面。「当たり前だと思っていたことのありがたさ」に感動を覚える。

③結び…本作の見処は?
○: 『インターステラー』と同じ状況に陥りながらながら、こちらのマット・デイモンは明るく前向き。実話のようなサバイバル術には感心させられる。
○: 作中に悪人が登場せず、一つの目標に向かって団結する姿は心地よく、感動的だ。
○: 『インターステラー』のマット・デイモンとジェシカ・チャステインが再共演。『ロード・オブ・ザ・リング』のショーン・ビーンが作中の「エルロンド会議」に出席など、キャストの過去作品とあわせて鑑賞したくなる。
▲: 作中に時間経過を表す「ソル」とは、火星での1日を表し、1ソルが24時間39分35秒である…などの科学的な背景は描写が薄く、マット・デイモンが何のために悪戦苦闘しているか分かりづらい。
▲: 原作由来でしょうがないが、アクシデントが多すぎ、マット・デイモンが気の毒になると同時に、エメリッヒ作品のような「いきなりパニック」場面はほどほどで良いと思う。
▲: 音楽が重要な演出になっている作品であり、歌詞の字幕入りのほうが良いかと思える。
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