ブタブタ

仮面ライダー1号のブタブタのレビュー・感想・評価

仮面ライダー1号(2016年製作の映画)
3.5
ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA』はゴジラ映画としては100点、映画としては0点と誰かが書いてました。
『仮面ライダー1号』は藤岡弘、映画としては100点、映画としても仮面ライダー作品としても0点でしょうか。

半世紀近くに渡ってショッカーと戦い続ける仮面ライダー1号=本郷猛と齢70近くにして自らアクションもこなし大河ドラマからバラエティまで今尚第一線で活躍を続ける藤岡弘、の間には既に現実とフィクションの境界線などなく、少なくとも藤岡弘、氏御本人にはその区別は全くついていないと思います。

一種のセミドキュメンタリーと言いますか、仮面ライダーと言う設定の世界の中で後は殆ど藤岡弘、氏のアドリブ・自由・放し飼い状態で一番近いのは笑福亭鶴瓶師匠の『スジナシ』じゃないでしょうか?

昔あったフェイクドキュメンタリー番組『川口宏探検隊』(当時は本当の探検物として放送してましたが)をリブートした『藤岡弘、探検隊』と言う番組があったのですが「藤岡弘、」には現実世界のジャングルと言えど舞台設定としては役不足で物足りないですし「仮面ライダー」と言う舞台設定を用意して後は藤岡氏の自由にやってもらう、本作のコンセプトは一応は成功してると思います。

内容はほぼ全部「藤岡弘、」
登場→戦う、説教、戦う、説教、途中女子高生とデート、戦う、説教~ループ(エンドレス)

「パパー、ゴーストはー?」のお子様達の声をものともせずひたすら熱く語る本郷猛(=藤岡弘、)

仮面ライダー2号=一文字隼人を演じる佐々木剛氏はお年を召してしまい(佐々木氏は藤岡氏と同い年ですが藤岡氏が異常に若すぎる)仮面ライダーを演じ続けるのはもう無理でしょうし潮健児氏、天野英世氏等嘗ての『仮面ライダー』を支えたメンバーも既に多くの人が鬼籍に入り、それでもただひとり未だ現役で仮面ライダーをやり続ける藤岡弘、氏の姿は凄いと思うと同時に御本人には悪いのですが孤独で少し寂しくも見えます。

地獄大使の身体を労る本郷猛なんて、もう敵とか味方とか関係ない、ショッカーすらも本郷猛(=藤岡弘、)にとっては
何度も激闘を繰り返した「戦友」であり
同窓会で懐かしい顔にまた逢える、みたいな気持ちなんじゃないでしょうか。
(それは仮面ライダーとしてはどうなんだと思いますが)

『劇場版仮面ライダー』についてですが仮面ライダー1号と現在の所謂平成ライダーの世界観そのものが合っていない、地続きの世界とは思えずそれを無理矢理くっつけて脚本を書いている、『電王』『ディケイド』以降のタイムマシン・パラレルワールド設定によって「何でもあり」になってしまった弊害が本作にも出ていて、死んだ人間を何度でも生き返らせる事が出来る、「あれは平行世界」の一言でどんな事でも「なし」に出来る、それが仮面ライダー(映画版)の話しの軽さや昭和の仮面ライダー達ですらモブキャラの様になってしまって仮面ライダーの「ヒーロー」としての価値を下げてしまってると思います。

本作では逆に仮面ライダー1号・本郷猛が主役の為に現在の、リアルタイムの子供達のヒーローである筈の仮面ライダーゴーストがオマケになってしまっています。

藤岡弘、氏と今の若い俳優を同じ仮面ライダーとして対等に並べてドラマを成立させる事は不可能でしょう。
だから安易に今のライダーを出すのでなく藤岡弘、氏と並び立ちその人間性・キャラクターに置いても遜色ない「濃い」人物を映画版オリジナルライダーとして登場させるべきだったと思います。

バラエティ番組で度々藤岡氏と一緒に洞窟探検なんかをさせられている「照英」氏が新しい2号ライダーとしては最高なんじゃないでしょうか?
以前バラエティ番組で見たのが危険な場所でもどんどん進む藤岡弘、の後を渋々付いていく照英。
無茶ぶりばっかりする藤岡弘、に文句を言いつつなんだかんだ言いながら互いに信頼しあい助け合い最後は藤岡弘、の説教に号泣しながらこれまた思いの丈を演説する照英。
あの感じを仮面ライダーでもやってくれたら最高なんですが。
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