TAK44マグナム

怪獣の日のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

怪獣の日(2014年製作の映画)
3.9
もうひとつの「シン・ゴジラ」


ある田舎町の海岸に巨大怪獣が打ち上がった。
それは自衛隊初の防衛出動によって駆逐されたと思われていた怪獣で、大学の生物研究チームの初見では、呼吸もなく、瞳孔が完全に開いていることなどから「死体」であると認定される。
主人公の大学職員は、あくまでも未知の生物なので充分な検査なしでは死体と断定するのは危険だと訴えるが、浜辺に建屋を建設し、怪獣の生態を研究したい政府と、年間20億円の特別補助金目当ての町行政の思惑の前に、その声が届くことはなかった。
そして建屋が完成し、そのニュースを伝えているレポーターの前で・・・・・


巨大怪獣が現れ、それを自衛隊が駆逐したとして、その死骸をどうするべきなのか右往左往する人々の姿を追う体裁ですが、これは完全に原発問題そのものですね。
人間が完全にコントロールすることができないモノを、じゅうぶんな管理状態にないまま稼働し続けることがどういう結果につながるのか?(しかも、我々はそれを知っている!)
それを怪獣に置き換えて訴えている映画だと思います。

危険なものに反対する人々、危険を承知で利益を追求する人々の対立。
横暴な行政側や、長いものにまかれるしかない研究者の姿はリアルに映り、硬質すぎるきらいはあるものの高い演出力がわかりやすく様々な問題を浮き彫りにしていきます。

ストレートに原発問題として扱わずに怪獣映画に置き換えている割にはユーモアが足りないという意見が散見されますが、それならば、怪獣の死骸処理という観点から面白いエピソードとして成り立っている「ウルトラマンティガ」の「怪獣が出てきた日」をオススメします。
怪獣の死骸が打ち上がる導入部が全く同じだったりしますよ。


約30分の短編で気軽に観られますし、ちゃんと怪獣もないがしろにしないのが好感が持てるので、もちろん本作もオススメ致します。
特に「シン・ゴジラ」を観て思うところがあった方は、作り手は違えど原型のような作品ですので興味深いのではないでしょうか。


(某有名動画サイトで鑑賞)