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昔々、アナトリアでのslowのレビュー・感想・評価

昔々、アナトリアで(2011年製作の映画)
4.6
一抹の光を残す草原の向こうから、3台の車が走ってくる。停まった車から連れ出されたのはある事件の容疑者。どうやら死体を遺棄した場所を尋ねられているようなのだが、もごもごと歯切れが悪い。何か企みでもあるのだろうか。空は静まり、車のライトが照らす辺りが煌々と輝いている。

主要な人物は医者、検事、警部、容疑者。
それぞれが愚痴や身の上話をするのだが、それに対する応えや相槌はどれも曖昧だ。
男達の態度は殺人事件の捜査にしては軽く、誰もが他人事のよう。物語のテンションは2時間半、この調子である。しかし、この会話がとても面白い。さらにそれぞれの行動や間で人柄まで見えてくるから上手い。トルコ映画で浮かぶのは、セミフ・カプランオールのユスフ三部作。映像はこれに近いものがあり、能動性を求められる映画の部類。幾つもの屍と美しい光。ラストの未視感。長尺だが1回、2回と観ると、より楽しめると思う。

きっと、誰かが語る日が来るのだろう。
昔々、アナトリアで…と。
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