汚れた乳

昔々、アナトリアでの汚れた乳のレビュー・感想・評価

昔々、アナトリアで(2011年製作の映画)
4.0
物語は実況見分に向かう警察車両の遠景から始まる。このオープニングが凄く良い。
さて、この作品二時間半とわりと長尺なんだけど、ジェイランが何を撮って何を撮らなかったかについてすげー悩まされる事になる。例えば遺体を現場から運ぶ段になって死体袋を忘れた云々で一悶着がある。このくだりって作品にとって必要だったわけでしょう。何故?物語は実況見分から始まるというのにだ。
ラストのモルグでの解剖のシークエンスにおいても、窓際で外を見やるドクターを映したショットは頬の血にフォーカスしている。何故?
そういう余白が面白みの一つかもしれない。むしろこの作品に限らずジェイランの映画はいつもそうだ。
『雪の轍』のインタビューで観客の想像を邪魔したくないと語るヒトコマがあって、そういう事にデリケートに気を遣う人なのかもしれない。

個人的にジェイランの映画はライティングが最高にツボるんだけど、反面『ゴダールの決別』を彷彿とさせるショットなどスノッブさが鼻につく箇所もある。
汚れた乳

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