欲望と陰謀が渦巻く70年代のロサンゼルスが舞台なのに、陰鬱な空気は微塵もなく、底の抜けたような明るさをまとった映画だった。
シェーン・ブラックは大都会の暗黒面に深く沈み込む気などハナからなかったに違いないが、ならば、なぜこの題材を選んだのだろうか。理解に苦しむ。人間を半分捨てた畜生と人間を捨て切れない甘ったれが、権力に噛みつく。ヒーローの映画でないのであれば、彼らは玉砕するしかないはずだ。
ジャクソン・ヒーリー(ラッセル・クロウ)がレストランで撃ってしまったであろう相手。彼が殺し屋の首をひねって殺す様を見て涙を流すホリー(アンガーリー・ライス)。コーヒーですべって転ぶとか車の上に立って着地とか、そんな馬鹿げた茶番にうつつをぬかしている暇があったら、優しさが命取りになる荒涼とした世界の残酷を描くべきだろう。
アース・ウィンド&ファイアーやビージーズのディスコナンバーも空疎で、もの悲しい。