凛太朗

おみおくりの作法の凛太朗のレビュー・感想・評価

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
4.3
ロンドンに住まう44歳の独身男ジョン・メイの仕事は、ケニントン地区で孤独死した人間の葬儀を行うこと。
几帳面で優しい性格のジョンは、孤独死を事務的に処理せず、一人一人の生き様に想いを馳せるように故人を偲ぶ。
ある時、ジョンの向かいの家で孤独死した老人ビリー・ストークの案件を受け持つことになったが、時を同じくして人員整理の為に解雇通告が言い渡され、これが最後の仕事となるのだったが…

物凄く淡々としていて、台詞も少なく、ゆったりとしたカメラワークと、ジョンの所作から、ジョン及び故人の為人、人生などについて観客は推察することになるのだけれど、こんなに静かな映画なのに、わかりすぎるくらいにわかるという凄さが、まずあると思います。

ジョンは几帳面ではあるが決して事務的なわけではなく自分なりの流儀があり、それは孤独死した故人にもしも思いというものがあるのであれば、この上なく有難いこと。
しかしジョンもまた、自分の仕事の中で接する故人と同じく孤独な人間である。

よく聞くことですが、葬式や墓なんてものは結局、故人ではなく遺されたものにとっての心の拠り所であったり、気持ちを整理するためのものであると。
私自身、そう思うことがあったりすることもあるのですが、劇中でのジョンはこれをきっぱりと否定し、故人のためであることを肯定します。
何故ジョンがこのような考えに至るのか?
彼が優しいからというのもあるでしょうが、やはり彼自身が孤独だから、自分自身に対するせめてもの救いとしての思いもあるのではなかろうか。
だからこそジョンは、ビリーの人生を通して色々な人と出会う中で、普段は凄く落ち着いてて無表情が多い中、ポジティブなことに関して物凄く嬉しそうな表情を素直に浮かべ、饒舌にもなっていた。

しかし、映画終盤あたりは結構な衝撃であった。嘘だろやめてくれよと。心臓抉られる思いに陥ったのであったが、更にまさかの「え!?」が待ち受けていた。
色々な受け止め方ができると思うし、私も複雑だけれど、それでもよかったと言いたい。
凛太朗

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