むさじー

おみおくりの作法のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<孤独死を弔う男が、死者の”生きていた証”を探して>

暗く重いテーマだが、淡々と描く中で、クスっと笑えるシーンや穏やかな空気が流れていて温かく、それが救いになっている。
孤独死した人に対して、その人が歩んできた人生の意味、存在した証を探すことで死者を弔いたいという誠実な思いだけで仕事をするメイだった。
それは独身、親族・友人無しという自分を考えたとき、“明日の我が身”であり、だから死者の人生に思いを馳せ調べることは、自分自身の“生きている証”を手に入れるための作業でもあった。
調査対象だったビリーの人生はミステリーのように徐々に明かされていき、その結果、多くの生者に見送られ旅立つ。
一方、メイの葬儀には誰も出席せず、それをケリーも知らず、死者の霊だけが見送るというのは寂し過ぎるエンディングのようにも見えるが、それは生者の見方であって、今まで関わってきた死者から感謝され迎えられる死もまたあり、というメッセージなのだろう。
終盤、メイがバスに轢かれて、瀕死のメイの表情に笑みが浮かぶシーンが印象に残るが、彼にとっては、死後の世界や霊の存在が信じられ、現世の善行が来世の幸福をもたらすというような宗教観を強く信じていたと思える。
だから半分くらいはハッピーエンドなのかも知れない。
むさじー

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