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ハイ・ライズの東京キネマのレビュー・感想・評価

ハイ・ライズ(2015年製作の映画)
3.0
例えばですね、特にヨーロッパで仕事をしてビックリすることなんですが、付帯業務としての「掃除」は拒否されます。日本式の「場を清め・・・」の精神はありません。おそらく、「掃除」は底辺の人たちがやる仕事だという意識があるからなんでしょうが、徹底して否定されます。変に勘違いして、日本人支社長あたりが率先垂範して「掃除」をしようものなら、立派なボスということにはならず、逆に下級階層がトップをやっている会社だと軽蔑されるだけです。

で、この映画なんですが、上層階級対下層階級という設定条件で感じる違和感は、結局こういった社会通念上の違いじゃないかと思うのです。おそらくイギリスやフランスの人たちだったら、この物語の設定はすんなり入るでしょうし、階級闘争的な結論の出し方も納得するんだろうと思うのですがね。

でもね、やっぱりそれはコミュニストの理屈ですよ。つまり、この混乱や貧しさの原因は上層階級の人たちで、だから上層階級の金持ち達を皆殺しにすれば私たちは幸せになる、っていう論理です。実際、フランスやロシアや中国はそういうことをやって、むしろ貧富の差を拡大してしまった訳ですし、その猛反省から今の国際的な協調関係が出来たとも言える訳ですが、最近でもアメリカではオキュパイ・ウォール・ストリートもありましたし、「世界の富、上位8人の富豪が下位50%の合計分を独占」なんていうニュースもあって、結局、世界の経済的再分配の制度設計が、実は何も出来ていないじゃないか、ということも事実としてある訳です。

だからこそ、こういった暴力的革命論が説得力を持つということになるんでしょうし、こういったテーマの映画が出てくるとも言えるんですが、本当に今こそ知恵の出し所なんですよね。そういった気付きというか、覚醒と言いますか、それがこの映画の価値です。だからね、ちょっと息がつまってしまうのですよ。。。
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