セトヤマ

FOUJITAのセトヤマのレビュー・感想・評価

FOUJITA(2015年製作の映画)
3.5
小栗康平監督作品、久しぶりに鑑賞。
やっぱり小栗作品は小栗監督なのだな。

全編ほぼフィックスの画で綴られた画家・藤田嗣治の姿。僕の覚えてる限りでは3カットだけカメラワークがあったかなと、それも全てドリーバックだったと思います。多分(エンドロールは除きます)

静止したフレーミングの中で絵画の様に人物を配置し、静かに静かに進んでいく映画。
感情は極力感じさせず、藤田の苦悩も人生の説明もなく、淡々と藤田がいた時間だけが流れていく。

個人的にはフランスパートはあまり好きになれず、ちょっと画が死んでる様に感じられ、逆に日本に入ってからは画が生きている、そんな気がした。
そこは監督が得意とする日本の情景が切り取られてたからかもしれないし、あえてなのかもしれないが、日本での自然など、原風景を匂わせる、素敵な画が続く。


さて藤田嗣治、実は僕は勉強不足でよく知らずの鑑賞だった。映画中では彼の自伝的話は出てこない。ただパリの画壇で評価され絵が売れている日本人ということだけしか分からない。
そこに愛した女がいて、彼がいて、馬鹿騒ぎに興じる人々の中に時代の閉塞感を感じるだけである。

日本に帰ってきてからも同じく、説明はなく、陸軍の美術協会の理事長になった偉い先生ということだけが分かり、戦争のため田舎で疎開暮らしをしている。そしてそこに五番目の婦人と共に敗戦へと突き進んでいく人々の生活が描かれている。

ドラマがない、というと語弊があるが、分かりやすさはない。
「泥の河」から監督は基本的に物語を展開するつもりではなく、雰囲気を伝えようとしている。そこで生きてる人々の鼓動を感じる、それだけに徹している気がする。

ラストカットのFOUJITAの絵は素晴らしかった。
何かに化かされているのではないか、時代の狂った鼓動を聴こえたのだ。