うぐいす

FOUJITAのうぐいすのレビュー・感想・評価

FOUJITA(2015年製作の映画)
3.3
とにかく、シーンが移り変わる度にハッとするような美しい画が表れて、美術も映画も何の知識もない自分でも、構図や光の加減などに拘って作られていると感じました。
美術館で、作品を眺めて進んでいくような感覚です。

若くして画壇の寵児となったパリでの享楽的な姿と、年月を経て帰国し、戦時下の日本で戦争画を描く立場となった姿と、ものすごい落差だと思うのですが、藤田は、なんだか常に、ある意味芸術家らしく浮世離れしていて、そこだけは一貫している感じがしました。
だから、戦争画もあくまでひとつの作品で、お国のためとか戦意高揚とか想いを込めてっていうことではなかったんじゃないのかなぁと思いました。その時、画家として描く題材はそれしかなかったというか。

だから、戦争というものに対する感覚が、村人や例えばその中でも赤紙が届いた子と母のそれとは、隔たりがあって現実感が薄いような、そんな感じを受けて、ちょっと哀しいような気がしました。

彼にとっては、戦争に化かされていた、ということなのかなと思いました。

加瀬亮さん出演作品でピックアップ。
例えば佇まいだけで、シーンに求められている空気を作るのがほんとに上手いと思いました。
そして物語を語るような声がとても好きでした。
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