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FOUJITAのodyssのレビュー・感想・評価

FOUJITA(2015年製作の映画)
3.0
【イメージ主体の映画だから】

日仏合作、小栗康平監督作品。

戦前、フランスに渡って活躍した画家・藤田嗣治を描いた映画である。藤田を演じるのはオダギリ・ジョー。

時期的には、第一次大戦後にようやく売れるようになって知名度が上がった頃から、やがて日本に帰国して若い日本人女性と再婚するが、第二次世界大戦期を迎え、画家の立場から時局にはそれなりに協力する頃までを描いている。

戦後になって戦争協力者とされた藤田は、渡仏してフランス国籍を取得しカトリック教徒となったが、その辺は描いていない。

本作はいわゆる伝記映画ではない。
藤田嗣治の画家としての、或いは人間としての生涯を分かりやすくたどるということはしていない。
むしろ、画家である藤田を、映像作家である小栗康平が自分なりにイメージの世界で表現しようとした作品である。

つまり、筋書きを追うのではなく、場面ごとの映像の作りを味わうのが正しい鑑賞法ではないか。
映像は全体的に暗めだが、映画館で見る限りにおいては解像度はそれなりにある。DVDだとどうか分からないが。

物語性に乏しくイメージ主体の映画を見るのが不得手な人は、あらかじめ藤田の生涯を調べて頭に入れてから鑑賞するのもいいだろう。

他のユーザーの感想・評価

日本を代表する洋画家である藤田嗣治の半生を描く伝記映画。
アートを勉強する上で彼の代表作と人生についてはある程度知っているが、この映画からは作品の魅力や人生については若干の説明不足な印象。
どちらかというと彼の内面や周辺人物を描いているように見えたが、それにしても淡々と描きすぎな気がする。

とはいっても現代の俳優の中でもとりわけアート的な役柄がぴったりなオダギリジョーははまり役で自分の想像していたフジタのとおりなので満足。
ただオダジョーは撮影後も藤田にはあまり興味が無かったらしい、そこも含めて愛せる(笑)
山市

山市の感想・評価

-
多用される引きの画が冷淡さを醸し出していてよかった。
あと序盤のオダジョーが楽しそうで笑ってしまった、思い返せばゴリラ野球映画の時もやたら楽しそうだった気がする。変わり者の役やるの好きなんだろうな。
CharlieZG

CharlieZGの感想・評価

3.6

このレビューはネタバレを含みます

🖼勝手に秋の絵画展🎨㊳

フランスで評価され後に帰化した画家藤田嗣治の物語。

これは伝記ではなく、藤田の人生の一部分だけを切り取って、ゆっくりとしたテンポで幻想的に描いたアート作品。

パリでの自由奔放で華やかな前半と、帰国して戦争に巻き込まれる後半と、くっきりとしたコントラストが藤田から見た両国の印象、ひいては何故藤田がフランスに帰化したのかという理由を表現しているように感じられた。

日本の疎開先で見聞きしたこと、2人目の息子まで徴兵される母親の気持ちや戦争画を描けと見せられた衝撃的なフィルムなど、繊細な芸術家の心には相当堪えたのだと思う。

パリでのおかっぱ頭にチョボ髭に丸メガネにイヤリング、吹き出すほど可笑しな風態だけど本当にそうだったらしい。後から本人写真見て酷似っぷりにまた吹き出した(笑)
それからオダギリジョー独特のテンションの低さも役柄にぴったりハマっていて良かったと思う。

私は好きだけどアート系苦手な人には合わない作品なのでは・・・。


監督 小栗康平

キャスト
オダギリジョー
中谷美紀
アナ・ジラルド
アンジェル・ユモー
マリー・クレメール
加瀬亮
りりぃ
岸部一徳
2022年341本目
「FOUJITA」

画家藤田嗣治の映画
伝記としなかったのはあまりにも恣意的な感じがしたから

期待して見ただけに残念

パリで認められた日本人画家藤田
今でもフランスでは日本の人・ものはまったく認めてないですよね。家電も車もテレビで日本人タレントが出ることまない。それはいいんだけどそういう土壌の中で芸術分野で日本人がみとめられるってすごいこと。

残念ながらその藤田の絵の魅力、時代をまったく描けていない。日本に帰ってきてからの戦争画も重要だが中谷美紀に引っ張られたか。ブラジルを描いて欲しかった。
失意の中フランスに行くところ、その先も無し。

オダギリジョーも単なる優しい人。藤田の押しのある顔、独特な奇抜なセンス、軍属として出世した部分、どう考えてもあんないつものオダギリジョーみたいな人じゃなかったはずだよと思っちゃったなー。
mam

mamの感想・評価

2.5

このレビューはネタバレを含みます

フジタについての知りたいことが、何ひとつ語られていなく、只々ながい...。
この作品は一体何を伝えたかったのだろう。

2時間近くの半分は日本の戦時中。その後レオナールになる過程が見たかったのに...。

パリの街や日本の田舎の風景が美しく映し出されていた映像はとても良かった。

2023-116
オダギリジョーの藤田嗣治というのは想像つかなかったが少し色っぽすぎるけど意外に合っていた。独特の髪型が支配的すぎるからかな?

小栗監督は以前の作品は理解できていたつもりだったがこの作品はシーンごとの映像は静謐で美しいが時系列には沿っているもののエピソードが脈絡なく繋がっている印象で話が頭に入ってこなかった。
手法としては鈴木清順あたりを狙ったのだろうか?(狐のくだりなど)

藤田嗣治についても不勉強なせいかあまりよく理解できなかったのが残念。
Fuyuki

Fuyukiの感想・評価

1.0
酷すぎる。
史実的にも時系列が曖昧、心理描写など映画的に観ても駄作。
彼の生き様であれば、もっと映画として成立するはず。
監督、脚本、撮影の観点でも最悪。
嘘くさい美術と絵画を意識したのかわからないが、画面構成や絵づくりも最悪。
苛立ちしか感じない。
こんな褒める所が無い映画も珍しい。

山田五郎のYouTube解説の方が、100万倍良い
akiko

akikoの感想・評価

2.8
印象的なシーンはたくさんあるけど、藤田嗣治について語っているようないないような。
↓のレビューは、以前のアカウントにて鑑賞直後に投稿したレビューになります。

※ 最後に少しだけ追記しました。

☆☆☆★★★

画家藤田はパリで大成功をおさめる。
彼にとっては、パリの生活は毎日がパーティーの様に楽しい事ばかりだ。常に刺激に満ち溢れ、画家として題材にも事欠かない。
テクニックにも長け、廻りからも一目置かれている。

ここまでが前半部分のお話。
そして映画は突如戦争中の日本へと飛ぶ。

画家藤田はパリで大成功をおさめた事で、戦争画家として祖国日本で(当時としては)かなりの待遇を受けていた。
パリでの生活とは違い、人々の暮らしは困窮を極めており、パリの時の様な華やかさとは無縁の日々を過ごす毎日だった。

【死】【戦争】【贖罪】は、どうやら映画作家小栗康平にとって切っても切れないテーマになりつつあるのかも知れない…と、今回初めて(一方的に)考えてみた。

『泥の河』には、【戦争】の影が画面の隅々にまでつき纏っているし。加賀まりこが生きるすべは【贖罪】とは切っても切れない関係性を内包していた…とも思える。
サワガニを焼く場面は、監督自身の口から『灰とダイヤモンド』での同胞の魂に祈りを捧げる(死者を敬う)場面のオマージュと公言している。

また一度のみの鑑賞の為に、的を得ているのか疑わしいのですが。『死の棘』は元特攻隊員の話で有り、浮気による不和を、夫婦が乗り越えて行く。【贖罪】的な要素があった。

『眠る男』は(これもはっきりと覚えてはいないのですが)正に【死】に纏わる話に相違ない。

そこで今一度考えてみたい小栗作品が『埋もれ木』だ。
それまでの小栗作品とは一線を化す土着性溢れる作品だが、あの作品で描かれた事が、今作品でのバリでの馬鹿騒ぎに於ける場面に繋がるのか〜…とすら思った。
だからといって、何を描きたいのか?がよく分からなかった『埋もれ木』の評価が個人的にですが、上がる訳ではないのですが…。

本作品で描かれた藤田は、芸術の都パリで大成功をおさめながら、芸術家としての心の底からの満足感を得られていたのか?との思いが観ていて感じられる。
ひょっとしたらテクニックに長けていたからこそ、芸術家として心の底から沸き上がる様な感情は生まれずに、単に「上手く描こう!」との思いだけで、本当の自分は偽っていたのではないのか?との描かれ方の様に見える。

この見方は、あくまでも私個人の作品を観た上での感じ方ですが。映画後半での日本パートでは、藤田は心のどこかに'引け目の様なモノ'を抱え込んでいるかの様に伺えた。
芸術家として、国家に魂を売り渡してしまった事の負い目。則ち【贖罪】にこそ見えるのだ!
しかしながら、芸術家として描ける事の'縛り'が、逆に彼にとっては本質を見抜く:描く眼を取り戻させた…とは言えないだろうか。

なにゆえ小栗作品だけに、単純に万人が理解出来る様な作りでは無いので、あくまでも個人的な推測になってしまうのだが…。

抑制された画面・美術構成は『死の棘』:『眠る男』を更に極め、静謐なロケ風景は藤田本人の(芸術家としての)心のざわめきにすら受け取れる。

(2015年11月30日/ユーロスペース/シアター2)

※ 映画鑑賞数年後に、藤田の代表作と言える『アッッ島玉砕』を間近に見る機会を得た。
その迫り来る力強さと迫力に圧倒され、しばし茫然とさせられてしまった。
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