ドント

私たちのハァハァのドントのレビュー・感想・評価

私たちのハァハァ(2015年製作の映画)
4.6
2015年。完璧な、と言いたくなるような素晴らしき青春映画だった。大好きなバンド(クリープハイプ)のライブを観るため、自転車で九州から東京に、半ば突発的に行くことにした女子高生4人の旅路。ちなみに自転車は2日目に乗り捨てる。足とか尻が痛いから。あとはヒッチハイクとかで何とかなるっしょ!!
いわば日本&女子版『デトロイト・ロック・シティ』なのだが、単純な劇映画ではない。彼女たちが記録のため撮影しているドキュメンタリー的なカメラの小さめの映像と、ドラマ映画としての大きな映像が入れ替わる。ベタベタした日記動画としては若さゆえの圧倒的熱量を、ドラマとしてはその若さや青春の痛々しさ(イタさ)、儚さ、痛切さをそれぞれに切り取る。
POVとしての臨場感と、劇映画としての冷静さの間を行き来して、観ている者を揺り動かす。しかもこやつらハンパではなくノープランなので、そういう意味でも落ち着いて観てられねぇのである。ちょっと想像してみてください。はい、貴方の想像の3倍はノープランです。
しかしそんなハチャメチャさこそが「青春」、「理想の青春」なのではないのか。他人への迷惑が何ぞや、倫理もルールもあるものか、私たちには今しかない! ……無論本人たちにはそんな意識はない。その意識のなさ、有り体に言えばバカっぷりの再現が完璧である。でもバカであっても本人たちは真剣なのだ。それが痛いほど伝わってくる。
幾度もつまずいて痛い目に遭いつつバカみたいに走り続けた7日間が強引に、音を立ててへし折るように強引に祝福されるクライマックス。私は顔を押さえて声を上げて号泣した。この瞬間には揺らぐ青春も不安も一切存在しない。人間が死ぬまで忘れない一瞬だ。
本作はその一瞬を、そしてその一瞬に至るまでに過ごした時間を、友達と共につむぎ、掴む物語である。尊いというのはこういうものを言うのだろう。青春や友達は尊い。遠く過ぎ去ってもあるいはその経験がなくともなお尊いことを、この映画は鮮烈に教えてくれる。今年ベスト級。
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