真昼の幽霊

家族はつらいよの真昼の幽霊のレビュー・感想・評価

家族はつらいよ(2016年製作の映画)
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一体、山田洋次はこのシリーズで何をしたいんだろうかと思ってしまう。登場人物全員の古臭い台詞回し、わざとらしく間抜けな音楽や効果音を付けたコミカル演出。

妻夫木聡演じる次男が「前近代的な表現はしないでほしい」みたいな台詞を言うが、この映画の台詞回しや演出が前近代的なのはわざとなんだろうか。だとしたらその意味はなんなんだろう。こういうのを老人は観て安心したいんだろうか。

同じ近年の山田洋次監督作でも『小さいおうち』はとてもよくできた映画だった。『母べえ』で呆れた自分が山田洋次を舐めてはいけないと思い知ったのが『小さいおうち』だった。それがなぜこんな昭和懐古趣味みたいな映画を三作も作る結果につながったのだろうか。

ただ単に古い表現が悪いというものでもない。『男はつらいよ』は今見ても笑える。なぜ『家族はつらいよ』は新しい映画なのに寒いのか。まったくもって不思議。

唯一この映画の中で救いがあるとしたら、橋爪功が演じる家長の逸脱ぶりだろう。ある意味寅さんのようなはみ出しもの感すらある(もっとも、寅さんと違ってこの爺さんは単にめんどくさいジジイなのが難点なのだが)。

『家族はつらいよ』というタイトルだけと、結果的に一番つらかったのは観てる自分だった。
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