こうみ大夫

ボヤージュ・オブ・タイムのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

ボヤージュ・オブ・タイム(2016年製作の映画)
3.9
ツリー・オブ・ライフから引き継がれるテレンス・マリックの思想「地球もまた生物である」が見事に描かれた傑作。この人はやはり編集と音楽が上手い、そこにおいてやはり巨匠なのだと改めて感じた。自然が何故このようなことをしているのか。その単純な不思議が、そこはかとない恐怖にも似た感情に変わっていく。テレンス・マリックはキューブリックらと同様、進化を完成されていくものとして捉えない。むしろそれは生命の変化の一部であり、何故変わり続けるのか、何故リセットをするのか、それは科学を突き詰めれば突き詰めるほど分からなくなっていく恐怖でもある。今回新たに注目すべきは「眼」というファクターだ。生物(ここには地球や宇宙というものも含まれる)は皆、共通に眼を持っている。それは偶然なのか?ゾッとするような綺麗な人間の眼が現れるとき、私は恐怖を感じた。なぜ眼はあるのか。これは果たして綺麗なのか。なぜ眼に惹かれるのか。その理由を探ることは、畏怖なる何かに触れることなのだろう。テレンス・マリックは聖書の言葉を引用しつつ、神の存在を背後に暗示している。
またいずれ生まれ変わるのに、私たちは何故富を積むのか。何故文明を作ろうとするのか。今すぐ世の倣いを捨てたくなるのがテレンス・マリックの映画の特徴。
この壮大なテーマに対して、中谷美紀のナレーションはあまりにも陳腐だった。なんでこう読むのかな、というくらい浅い。ナレーションは重要です。
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