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セッションのp99のレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.0
確かに『セッション』(複数のジャズ奏者が一つの曲を奏でること)しているが、本作のテーマはより深いところにあるに違いない。

原題は『Whiplash』。つまりは「鞭で打つ」とか、「医学的な症状:ムチウチ症」のこと(劇中曲の題名でもある)。どちらかと言うと原題の方があってる気もするが、これもなんとなくしっくりこない。

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本作はニーマン(マイルズ・テラー)とフレッチャー(J・K・シモンズ)の関係性に焦点が当てられる。そこには音楽学校の教官と生徒という師弟関係があって、「完全な音楽を生み出す」という共通の目的がある。

自己の理想を実現するために、フレッチャーは自分のバンドメンバーにこれでもかと言う程厳しい「指導」を与える。ここでは、メンバー同士の関係など取るに足らないことである。一人一人が正確にリズムを刻み、ハーモニーを奏でられたら、その場(バンド)に留まることができる。ただそれだけのことだ。

主人公のニーマンはドラマーである。ドラマーはあと2人登場するが、彼らと腕を磨き合うライバル関係になることなど、フレッチャーのバンドではありえない。奏者は絶対の孤独にいるのだ。対峙しているのは目の前のフレッチャー一人だけなのである。他のメンバーの気持ちなど知ったこっちゃない。それはただ蹴落とす対象でしかない。

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バンドメンバーはフレッチャーの理想に歩み寄り、「完全な音楽」のために自らを捧げる覚悟が必要なのである。それはとても難しく、フレッチャーが認めた者は数少ない。ニーマンがその理想に近づく過程で、顔つきまで変わってくるのがとても印象的であった。

そして、ドラムのテンポと指揮者のテンポが寸分の狂いもなく重なった瞬間、自らの理想とフレッチャーの理想も重なる。そしてそれは「完全な音楽」として表出されていくのである。

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色々と考えたが、本作一のキメ台詞『ファッキンテンポ!』をそのまま題名にするのはどうだろう。鬼気迫る正確なテンポのための指導、ひいては「完全な音楽」への追及の様子が浮かんでくるのではないだろうか?