Hiro

セッションのHiroのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.5
“よくやった、ほど有害な言葉はない。”

こんなにもがむしゃらで狂気的な映画
に出会えて幸せだ。緊張感と興奮で
“鳥肌が立つ”などでは表現が足りず、
“鳥が肌に立っていた。”3羽ほど。

主人公はジャズドラマーの夢を持ち
名門と言われる音楽院へ入学する。
入学してからはくすぶる日々が続くが
毎日激しい練習を繰り返していた彼は
ある“カリスマ鬼教師”に見出される。
そんな彼を待ち受けていたのは異常な
までに”完璧を求める”地獄のレッスン。
この二人の情熱にもう胸は“えぐられ”
脳は“痺れる”。そう、これはジャズの
皮をかぶった両者のプライドを賭けた
圧倒的な“殴り合い”映画でした。

ひたすら天才に“成る”ことを求めた男。
天才を“生み出す”ことに取り憑かれた男。
究極の“師弟関係”はここに成立している。

もうマイルズ・テラーとJ・K・シモンズに
完全ノックアウト。こういう作風を“苛烈”
と呼ぶのか?ラストの”9分19秒”のシーン
は歯を食いしばりながら観ていた。ビートに
合わせて跳ね飛ぶ“血と汗”にまみれた展開。
全編を通してあらゆる音が強烈に”殴り合っ
ている”。まさに”試合さながら”の空気感。

前半は物静かで気弱なムードの主人公が
鬼教師から刺激を受けて、次第に本性を
“剥き出し”にされていく変化の過程が
たまらない。この二人がカップルならば
“最高の夜”を過ごしていただろうに。

最後に、“ありのままの自分でいい”という
言葉などこの作品を全人類が観れば”きっと
辞書から消え失せる”。少なくとも今後は
自分が使う理由はもう見当たらない。

p.s.
デイミアン・チャゼル監督、実体験を元に
製作されたそうですね?お疲れ様でした。
微塵のブレもズレも許さない己との闘い。
“地獄を踏み台にしなければ最高の爆発は
起きないぞ”と耳元で叫ばれた気分です。
Hiro

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