すぎ

セッションのすぎのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.5
2015年に鑑賞した映画で1番引き込まれた作品。何度でも見れますよね。

『セッション』で巻き起こった、映画評論家・町山智浩さんと音楽家/文筆家・菊地成孔さんの論争について自分の意見を交えてみた感想です。

お二人の論争は調べるとすぐに出てくるので、未見の方は要チェック。
ちなみにわたしはジャズの知識は無知だし、純粋に映画を楽しんでいます。


生ぬるさは全て切り捨て、エッジの利いた部分のみを取り出したような本作。
ジャズに対する細やかな説明などはないまま、映画は進んでいく。

ジャズを知らない人から見れば、画面にうつる音楽のレベルは相当高いものだと思えるのでは。
(私はそう思った人)

しかし、そうではないらしい。
菊地氏に言わせれば、この音は
「リズム音痴のガキの、ジャガジャガうるさいばかりの不快なドラミング」
なんだそう。

菊池氏のような専門的知識を持つ人々を唸らせるほど音楽の完成度を高くしなかったのは、この映画の問題点として挙げられるかもしれない
主題が狭い分、隅々までチェックしやすく粗を探し放題だし。

しかしながらこの作品は、監督の経験をもとに作られた私的感情のこもった映画のようなので
決して音楽映画として完璧を目指したわけでないはず。

私的感情に重点を置いて作られたものが独りよがりな作品にならず、観客をここまで巻き込んでいる事が私にとっては感動なのです。
独りよがり映画をオ◯ニー映画と言ってるんですけど、それじゃなかった!

町山氏、菊池氏の批評における説得力は互角です。
どちらの言い分も理解できるからこそ、読者である我々は彼らの言葉に踊らされてしまう。

けれど、大の批評家同士の幼稚にも思える噛みつき合いは
映画内で起きた対立とほぼ似たようなもの。
もし、2人の意見に揺れ動く事があるならば
こんな風に鑑賞者に強い影響を与えた事実をもう一度よく考えたいものです。


強いパワーを持つ映画には、強い対立を巻き起こさせる力がある。
と心の底から思える映画です。
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