TaKeiteaZy

セッションのTaKeiteaZyのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.7
ジャズドラマーを志し、音楽学校に入学するけど、デビル顔スキンヘッド先生がめちゃくちゃ怖く、でも喰らい付く話!血がにじむよ!

映画史に名を残す最恐怒られ映画として名高い作品ですね。手前味噌ながら自分も高校から吹奏楽部でドラムをやってまして、その時の顧問や先輩から怒鳴り散らされたトラウマが再沸騰して、具合が悪くなりました。それくらい強烈な怒られ。そしてその怒られでどんどん崩壊していく主人公の精神。音楽映画じゃねえよもう...ノーカントリーかと思ったよ。カメラワークが秀逸で、同監督の最新作「バビロン」も観てみたくなりました。


人間が根源的恐怖を感じるものに「死」「病気」「闇」などがあるけど、現代ではその一つに「叱責」ていうのがあると思う。上の立場から強い言葉と行動で抑圧される恐怖。今社会でなんとか勤めてる人でも、行動の原理には上司などから叱られたくないから、ていうエネルギーで動いている人も少なくないのではないでしょうか。音楽はあくまで土台でしかなく、この映画はその根源的恐怖の権化で、人の心を変形させていく様子を描く「新種のホラー映画」なのではないでしょうか。ゾンビとかに食いちぎられる方がまだ笑って観れるぜ。だってこれは、ほとんどの誰しもが一度経験し、誰しもが恐れているもののはずだから。

また、先生の放つサディズムも、人間が持つ根源的なものと思います。あなたが強い立場なら、そうならないという自信がありますか?ということ。先生が「こうなってしまった」理由も多く語らず、むしろ純粋な物として描いてすらいる。イジメ、パワハラ、それらは全て俺たちが携えてきた原罪なのではないだろうか。当人は何一つ間違っちゃあいないと思っている、別ベクトルで魅せたもう一つの恐ろしさがありました。

この二つがトグロを巻いて天に昇り、現れたのが、純粋に素晴らしい演奏、ならば、これから音楽を職業とする人間は必ず見るべき映画だと思います。「楽しさ」だけで「素晴らしさ」を産めると思うなよ。

でも、もし少しヤンチャな奴が一人でもいたら「えらそうに!フザケたこと言ってんじゃねえー!チャランボ!チャランボ!」と蹴撃手マモルばりにJKシモンズの腹にヒザ蹴りがキマるのでは、ていう展開も見たかったですね。
TaKeiteaZy

TaKeiteaZy