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セッションのギルドのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.9
音楽を通じた対話(セッション)とカタルシスの現出を狂気的な音楽の完璧主義と鬼の演技で成し得た傑作です!
ハングリーな夢見る主人公と鬼教官フレッチャー先生とのやり取りで見える「夢を追いかける者とそれを見込んだ者を通じた人間性を捨てでも精進する美学の問題提起」が物凄い語り口で展開されるのが最高です!

 音響の臨場感やジャズの演奏、キャスト陣の演技は言うまでもなく素晴らしいです。でも、この映画が傑作たる所以は題材の基地外じみるほどの正確性の拘りと展開を過る伏線のエッジ、音楽を通じたメッセージ性にあると思います。

 バンドを統率する音程とテンポキープの完璧主義、ここの再現性が演奏にも活かされていてテンポや音程の微少なズレまでも再現しているのが凄いと思います。狙って大胆にズラすとあからさまに見えてノイズになる。けれども、曲として一見成立しているが実は細かいレベルでズレが起きている構造を"狙ってやる"技術的な難しさを知っているからこそ、この映画で題材にする音楽への拘りが半端なくて素晴らしいです。

 ストーリー展開も映像で魅せるスタイルが多いけど、次に起こる展開や主人公の心情表現が実は手前の伏線から読み解ける構造・成長のプロセスを1つの行為から導くところが最高です!

例えばフレッチャー先生がチャーリー・パーカーのシンバルを投げる話とドラムの映像。シンバルを投げる話の開幕ではフレッチャー先生は何も言わずに帰る⇒Whiplashの初演奏では椅子を投げられる⇒Caravanの主奏者選びの壮絶な勝負でも楽器を投げる⇒クライマックスのライブでは二人の表情から見える絆 ・・・など、語られる内容のシンプルさとは裏腹に映像に込められた成長を確かにかつ着実に進む姿を魅せるのが非常に上手くて心掴まれました…
あと、この映画の根幹にある「身も心を削ってでも勝利を掴む"本気"の狂気」/「勝負に安易に放棄することの精神的弱さは如何に安定と名誉と金を得たとしても人間的弱さに繋がる」というメッセージが映像によってこれほど説得力あるものに仕上げたのも良かったかな。

そして!この映画のクライマックスのライブが最高!
主人公の決意と共にバンドを統率し返して、その中でフレッチャー先生との音楽的対話と音楽を通じたカタルシスをもたらした構成は凄かったしエンディングの繋ぎが最高でした!

個人的に音楽を題材にした映画の中では最高峰の作品だと思います。
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