BOB

セッションのBOBのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.2
デイミアン・チャゼル監督の出世作。世界的ジャズドラマーを目指す青年を描いたスリラードラマ。

"There are no two words in the English language more harmful than "good job"."

新作『バビロン』に向けて再鑑賞。

大傑作だし、"俺映画"でもある。程度の差はあるものの、"成功を収めたい青年"ニーマンと"鬼教師"フレッチャーの師弟関係には、自分の実体験と重なる部分が多々あり、心に刺さった。指導者としての顔とプライベートでの顔の違いを知るシーンや、"第三者には理解し難い師弟の絆"みたいなものにはとても共感できた。

これは、ジャズ映画はおろか音楽映画でもなく、成長ドラマでもなく、二人の男による行き過ぎた支配権争いを描いたスリラードラマ。最近の作品でいうと、『聖なる鹿殺し』や『ライトハウス』に近いと思う。

"鬼教師"フレッチャー。近年、特にスポーツ業界で話題になる典型的な時代遅れの指導者。人格を否定する暴言や暴力は言語道断だし、犯罪者と言っても過言ではない。だだ、指導者としての信念に限っては理解できる所があり、個人的には切り捨てられない。

本番以上に緊張する雰囲気を練習で作り上げる。一定の高い基準を持っていて、教え子の能力を引き上げるためならば、どれだけ時間がかかろうとも、できるようになるまで責任を持って練習に付き合ってくれる。最高の褒め言葉は「よくやった」ではなく「悪くない」。自らが嫌われることも厭わない。(※好意的な解釈を大いに含む)

夕食時に繰り広げられた、音楽での成功とは何かを議論するシーンが印象深い。音楽の評価は、スポーツ🏈と比べると、個人の主観に委ねられることが多く、その良し悪しは一般人に理解されづらい。チャゼル監督の嘆きにも近い、偽らざる想いなのだろう。

マイルズ・テラーとJ・K・シモンズの怪演に拍手。実際に手から血が出たり、本当にビンタしたり、アクシデントで肋骨を折ったりと、文字通り体を張ったフィジカルな演技も素晴らしいが、二人の間で交わされる細かい表情の演技も格別。

自分が思うデミアン・チャゼル監督。
・【テーマ・題材】エリート主義。アメリカンドリームと恋。"all or nothing"。狂気に満ちた執着心。第三者の介入を許さない絶対的な二人の世界。
・【映画技巧】音と映像の完璧な連動。
ex) "ファッキンテンポ"に合わせたカット割り。スイッチパンetc 
・音楽家。ジャズ。ハーバード卒。
・ロマンチスト。ハリウッド的と言っても良いのかもしれないが、恋愛描写はかなりベタ。観客に解釈を委ねるラスト。

トリビア
・撮影期間はたったの19日。アカデミー作品賞にノミネートされた最も低予算の映画の1つ。

作品とは関係ないが、デイミアン・チャゼルが、『10クローバーフィールドレーン』の脚本に関わっていたとは知らなかった。

🎬『Rififi 男の争い』

「無能なやつはロックをやれ」

71(再)
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