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百日紅 Miss HOKUSAIのJIZEのレビュー・感想・評価

百日紅 Miss HOKUSAI(2014年製作の映画)
2.2
天才浮世絵師の生き様を四季折々な風情に込め江戸風俗やロック調な世界観で醸す刹那な長編アニメ映画!!まず90尺が実に快適。四季折々な"現"が過ぎ去る風情をカラッと仕上げた構成も評価に値した。テイスト自体は独特な死生観が日常の空気感に潜み命の有限を戯画的に炙り出し乾き切る達観視点な形相を呈す独特な趣。全体の余韻は散文詩的な無色透明な日常生活の積み重ねで日々が邁進し時に奇行な現象,異化効果の映像美に舌を巻き現実的な"江戸の情感"と非現実的な"浮世の光景"を同時に示唆させ世界観に浸る印象派な構造。要は現実と幻想が滑らかに透き通る人間讃美な主軸な映画。劇中で描かれる江戸時代の民衆を観て感じた事が,妙に醒め切った姿勢というか虚と実の判断に基づく怪異を当時の人々はあまり重要視せずむしろ現代より達観性に長け寛容な気で物事を享受している印象すら受けた。そういう意味で同じ人間にしろ聴覚,視覚,臭覚,味覚,触覚の感覚から得られる情報源の違いを映像を通じ実感できた事は形成される世界観の秘めた"何か"を体感する事ができた。また,絵画の怪異的な風情を映像美に落とし込み前世,現世,来世で輪を結ぶ幻想的な出で立ちも口をポッカリ開けグングン興味本位に惹き付けられる。描写で付け足せば現実と虚構の狭間描写が欠如し娯楽的にあれば完璧だった..更に欲を言えば群像味な江戸情緒の抽出を意識し過ぎたかな..

概要。江戸風俗研究家で文筆家や漫画家とし活躍する杉浦日向子の漫画代表作「百日紅」を『カラフル』の原恵一監督がアニメーション映画化。また声優では北斎役に松重豊とお栄役に杏など豪華俳優陣が集った。

江戸の体裁を踏襲する事自体は善,逆に人間ドラマ性の充足感に欠け次々に小話を畳み掛け重厚な切り口が連結せず集大成的な場面が伺えない閉塞感は悪,な映画のPRで事前に放つ「北斎の娘が主人公!」の謳い文句通り"狭い場所"に映画自体が腰を下ろし幕を閉じる陳腐さは結果的に否めない点。勿論,街を飛び交う喧騒や俯瞰的な全体を見下ろす画面作りの工夫など善良点も当然ある。ただ,映像で魅せるパッとしない山場の苦慮感や雰囲気重視な物語不在の構成による曖昧な偏りは観終わり個人的にはイマイチ。要は人物,展開,世界観,演出などダイナミズムな躍動感が全編に渡り過不足だったんだよな。キャラ造形の特徴もお栄や葛飾北斎を除けば大体同じ顔に見え特化性の演出も地味目に配されてましたかね。お栄を演じた女優の杏の気前良い声の雰囲気や葛飾北斎を演じた松重さんの渋味のバディな対極感は聴いてて居心地が冴え渡る。1番好きな描写はお栄と妹が船で両国橋の下を通過し徐々に波打ちが勢いを増し北斎の富嶽三十六景な有名絵図な荒波を呈する画角になる場面と絵画の妖怪が飛び出す場面。あと主題歌問題で椎名林檎の最後に流れるロック調な楽曲もソレじゃない感が駆け巡る..実直にあの楽曲でせめてもの余韻が崩壊。全体的に観念な台詞と何気ないリアリズムな日常場面の応酬が永遠な刹那を同時に醸し散文的に綴られているのでこの種の系統に涙脆くモッてかれる方は是非お勧めです!!