ジャン黒糖

神様なんかくそくらえのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

神様なんかくそくらえ(2014年製作の映画)
3.4
東京国際映画祭でグランプリと最優秀監督賞を受賞した本作。
サフディ兄弟監督作を観るときは本作も一緒に観たいなぁ思ってたらアマプラで配信されてるやん!よっしゃ!!ということで鑑賞。

この映画を観てまず感心したのは、「こんなニューヨーク観たことねぇー!!」だった。

自分は、アメリカだとシカゴは行ったことがあるけれどニューヨークには行ったことがない。
シカゴに行ったとき、都市全体の景観そのものはたしかにジョン・ヒューズ監督の『フェリスはある朝突然に』に出てきたシカゴと変わらない印象なんだけど、実際に街を歩いてみると路地裏は汚い場所もあるし、道端で路上生活をしている人もよく見かけた。
そのときは出張で数日訪れた程度だったので、詳しく散策できたわけではないけれど、”シカゴ”ときいてそれまでイメージしていた、区画整備された都市の印象とは裏腹に感じたギャップと本作『神様なんかくそくらえ』におけるニューヨークの雰囲気は似た印象というか、より強烈に、よりディープに実際に息づく都市のリアルさを感じた。

本作に出てくる若者たちはみな、ドラッグのためなら物乞いや万引きなど、日銭を稼ぐ手段がとにかく後先考えず短絡的で、仲間同士のいざこざも争点の視野も狭い。
ただ、それと同時に彼らはいずれも生きるのに必死だ。
主人公のハーリーは彼氏?のイリヤに愛されたい欲で必死。傍からみれば暴力を含めひどい彼氏にしか見えないイリヤだけど、それでもハーリーにとってイリヤは特別なのだ。
彼のためならリストカットして死のうとすることもいとわない。
短絡的な発想だけど、彼らはそこで得られる充足感のためなら何事も耐えられるのだ。
このヒリヒリさが、映画全体を終始覆う。

これが、主演ハーリーを演じたアリエル・ホームズの実体験をもとにしているというから驚き。
え!?劇中の出来事に近しいことが彼女自身にあったん?!!笑

劇中流れるアンビエントなシンセサイザーの楽曲も、この映画のヒリヒリとした空気感、主人公ら若者たちの抜け出せずにいる現実感を描写するのに一躍買っており、強烈な印象を残す。

オープニングクレジットの始まるタイミングやどこに向かっているか読めないストーリーテリング、ラストのあっけなさも含め、これは独特な映画バランスだなと思った。
(ラストのあっけなさ、思わずギョッとしてしまう演出など、すごい、、)
正直、これがグランプリを獲る映画なのか、と思うところはあるけれど、ただ、サフディ兄弟、癖になる映画を撮るな~。
ジャン黒糖

ジャン黒糖