こたつむり

グッドナイト・マミーのこたつむりのレビュー・感想・評価

グッドナイト・マミー(2014年製作の映画)
3.8
★ 育児中に観るのはオススメしません…。

子どもが隠れることができるトウモロコシ畑。
陽の光に揺れる森林。ひび割れた大地。
そんな自然豊かな環境で淡々と紡がれる物語。

…だった筈なのに。
「あれは僕のお母さんじゃない」
その言葉が血管を収縮させ、指先はふるふると痺れ、画面がふうっと遠のく感覚に。

しかも、物語途中で脳裏に浮かぶ着地点。
それは今のご時世、珍しくない形…なんて思ってしまったら最後、それを凌駕していく痛み。もうね。神経を一本一本切り落とされていくかのように響くのですよ。

これは久々に嫌な気分に陥りました。
生半可な気持ちで観るのは避けたほうが良いですね。双子の男の子たちが可愛いな…なんて淡い感情を抱くのも監督さんが仕掛けた“罠”なのです。

それは、まるで食虫植物のよう。
甘い匂いに騙された虫がパクリと食べられる…そんな世界の真理を描き出しているのです。しかも、実際に蟲(虫じゃあなく蟲)が蠢く場面もありますからね。昆虫が苦手な僕にはキツイものがありました。

まあ、そんなわけで。
確実に鬱々とした感情に支配される物語。
“恐怖”ではなく“厭”を描いたホラー映画として考えれば傑作の部類に入ると思います。それが好きか嫌いか…と問われたら後者なのですけどね。

また、余談として。
物語後半で想起したのは、かつて《週刊ヤングマガジン》で連載していた『LOVE GOD』のある場面。その作品に暗澹たる気持ちにさせられたのが功を奏し、今回は衝撃が少なくて済んだのかもしれません。

そう。
一度“厭”な気持ちを味わうと、次からは衝撃が少ないのです。それは自分の心がゴツゴツとした岩のように硬くなるから…その事実が一番“厭”な話ですね…。
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